いま多くの企業が変革を求められています。
長く続く経済停滞、人口減少、新興国の台頭と、もともと日本企業を取り巻く環境は厳しかったところに、新型コロナショックの追い打ち。変わらないと生き残れないと行った瀬戸際まで追い込まれている企業も多いでしょう。
既存の販路に限界が見えてきた中、新しい顧客に未来を見出す取り組みもされています。
日本に数多い製造業などを筆頭とするBtoB企業にとっては、直接消費者から売上をたてる to Cの事業は魅力的に映るでしょう。
本稿ではBtoB企業がtoC事業を行う際にまずなにをすべきか、なにに注意すべきかを、元一部上場BtoB企業正社員であり、現役のホテル経営者(BtoC)の筆者が考察していきます。
BtoBやBtoCは昔からよく聞く言葉ですが、最近はCtoCやDtoCという言葉もあり、すべてを正確に把握している人はあまり多くないのが実情です。
BはBusiness(事業)、CはCustomer(顧客)もしくはConsumer(消費者)
B to Bの一番わかり易い例は製造業の下請けや部品製造企業です。顧客も事業者=プロですから、梱包は最低限であったり、詳細な説明が不要だったり、場合によっては顧客から技術指導なども行われます。
B to Cでわかりやすいのはサービス業でしょう。ホテルや飲食店などがこれに当たります。
顧客が一般消費者なので、マスのメディアに対する広告や、厳しい安全基準、詳しい説明などが必要になります。
C to Cは消費者同士の商取引。古くはフリーマーケットに始まり、最近ではヤフオク!やメルカリ等インターネット上で盛んに取引されています。
最近注目を集めているのが、D to C。これはDirect to Consumer(直接消費者へ)という考え方です。
近年のトレンドでありキーワードに「中抜き」があります。インターネットがあらゆる場面での距離を縮めたことにより、中間業者のコストを省いて、より高いコストパフォーマンスを実現する企業が現れています。
現段階ではアパレル企業が多いですが、例えばパソコンメーカーのDELLが昔から行っていた、HPで構成を決めて注文して直接買うBTO(Build to order)もD to Cの一種と言えます。
この「中抜きを省き直接消費者に届ける」がBtoB企業がtoC事業に活路を見出すということと共通点があります。
今までは情報格差や流通の問題で頼らざるをえなかった中間業者がどんどん不要になってきています。
百貨店がそれであり、新聞配達店がそれです。
消費者がどんどん賢くなっている中、いつまでも「中抜き」を残して置くのが構造的に危険であることに疑いの余地はありません。
「中抜きを省く」を可能にしたのは、ほとんどの場合インターネットの登場です。
百貨店で売っているものは、そのほとんどがネットでより安く買えますし、情報を売る新聞という商品については、価格、量、速報性といった面でインターネットにかないませんし、新聞そのものを電子的に送ることも可能なので紙の新聞の発行部数は減少の一途をたどっています。
となると、BtoB企業がtoCの事業を行うときに、最初に意識すべきは「インターネットのフル活用」つまり、「Webマーケティング」を避けて通ることは出来ないという事実です。
Webマーケティングについて詳しく語ると1冊の本が書けてしまうので、ポイントだけご紹介すると、
・効果がわかりやすい(完全に数値化される)
・スピードが速い(数分から)
・コストが安い(無料から)
・狙ったターゲット層に直接訴求できる(狙い撃ちが可能)
と言ったところです。インターネット登場以前には想像も出来なかった手法を超安価で利用できるのがWebマーケティングの良いところです。
例えばラーメンの麺を専門とする製麺所は顧客がラーメン屋さんなので、元来B to B企業です。ですが、インターネットを使って自宅でラーメンを作る愛好家に販売したらどうでしょう。
この瞬間からB to C事業の誕生です。例えばBASEという初期費用無料でネットショップが開設できるサービスを使って販売すれば、初期投資なしにBtoC事業が開始できますし、パソコンに詳しい人なら1時間足らずで開設できるほど簡単かつ、スピードを持って行うことが出来ます。
もちろんBASEにネットショップを開設しただけで売れるわけではありませんから、正しく広告など販促活動を行っていく必要がありますが、これもすべて安価もしくは無料で実行可能。このすべてのプロセスがWebマーケティングと呼ばれているものです。
インターネットを活用すること、Webマーケティングを行うことをお話してきましたが、一番肝心な問題は「なにを売るか」という問題です。大きく2つに分かれます。
・今あるリソースを活用する。
・完全な新事業を立ち上げる。
の2パターンです。先述のラーメン製麺所→麺直販はリソースを活用したわかりやすい例ですが、ここまで直接的でなくても、例えばラーメンのレシピや作り方を教えるWebサイトを作ったり、料理教室を開く場合でもBtoC事業への転換と言えます。
今まで培った技術やノウハウは紛れもないその企業の強みですから、まず検討すべきはこのパターンになります。
成功率も1から新事業を立ち上げるより高いことは容易に想像できます。
一方で、流用可能なノウハウや技術がない(と思える)場合は、全くの新規事業に挑戦するパターンも考えられます。
この場合でも「人」という最大のリソースを活用しているので、完全にゼロから始める起業とは随分違いますが、リソースをうまく活用できた場合よりは成功率が下がるのは否定できないでしょう。
いかがでしたでしょうか。インターネットがこれだけ世界と人々のあり方を変えてしまった以上、新規事業でとりわけtoC事業でまず意識すべきはインターネット、Webマーケティングになります。
「趣味で作っていたペットの服がミンネ(ハンドメイド作品販売サイト)で人気になって、量産するようになった。」といったような例は数多く報告されています。
長年事業を行ってきた企業の技術やノウハウには必ず今の時代に生かせるものがあるはずです。
まずはそのノウハウ×インターネットを模索し、どうしてもなければ完全な新規事業という流れでBtoC事業への挑戦を検討してみてはいかがでしょうか。
その一連の流れで社内にWebマーケティングに関する知見が蓄積され、今まで気づかなかった自社製品や技術の魅力や活用方法を見出すことにもなるかもしれません。
本稿が貴社の新規事業やBtoC事業への転換のヒントに少しでもなれば幸いです。