コロナ禍で新商品・サービスに挑む老舗企業

新型コロナウイルスによる感染拡大はいまだ留まることを知らず、連日感染者数や死亡者数も増え続けています。
ロックダウンを実施する海外の国々もある中、日本国内でも経済活動に大きなダメージを与え続けています。
ビジネスではテレワークを行なう企業も増え、コロナ禍における働き方改革も各方面で叫ばれていますが、できることから行動してみようと、新たなビジネスを生み出そうと努力する前向きな企業も日々現れています。

今回はコロナ禍でも新商品や新サービスを誕生させるべく、懸命に挑戦している老舗企業にスポットを当てご紹介していきます。

 

ブランドや顧客基盤を活かしながら既存商品の売り方を工夫した事例

 

これまで培ってきた自社ブランドや顧客基盤を活用し、既に存在する商品をそれ自体は変えずに売り方を変えて業績を上げている企業として株式会社ワークマンが挙げられます。

ワークマンはもともと、建設現場などの作業員や職人たちのための作業服ショップとして誕生しましたが、購入者も驚くほどの高性能や機能性、安さといった価値も商品に持ち合わせていました。
そこで、ブランドや商品自体の強みはそのまま活かしながら、アウトドアに軸足を置いた新業態である「ワークマンプラス」を立ち上げたところ、多くの消費者の心をつかみ、現在、コロナ禍であるにも関わらず、業績を伸ばしています。

ワークマンプラスでは「働くプロの過酷な使用環境に耐える品質と高機能をもつ製品を、値札を見ないでお買い上げいただける安心の低価格で届けたい」とメッセージしていますが、数年前から各メディアで取り上げられることが増えたため、アウトドア愛好者はもちろん、日常生活の動作に気を使わなければならない妊婦の方々まで、幅広い客層に支持されるブランドへと成長しました。

ワークマンプラスでは広告活動も挑戦的で、幅広い客層をイメージして作られているため、いわゆる作業服屋のイメージとは全く異なるものですが、これがかえって既存業態の「ワークマン」にもうまく波及し、本体事業も好調となっています。

コロナ禍では密集・密閉・密接といった3密を避けることが政府や自治体からも勧められていますが、そんな状況下、3密を避けながら楽しめる娯楽としてキャンプなどのアウトドアを趣味として始める方々も増えたことから時代の波にも乗り、ワークマンプラスの業績が上がってきています。

 

既存の顧客が必要としている新たな商品を導入した事例

 

コロナ禍において、政府や自治体からの営業自粛要請もあり、大きな打撃を受けているのが飲食業界です。
そのため、コロナ対抗策として各店で導入が増えているのがテイクアウトです。
テイクアウトはできて間もない新しいお店の方が取り組みにスピーディーに対応しており、若い店舗経営者を中心にこの新たな市場をリードしています。

そんな中、歴史のある老舗店でもこのテイクアウトを積極的に取り入れる動きも出てきました。

名古屋市中区にある大甚本店は創業113年の老舗中の老舗居酒屋で、特に週末ともなると大行列ができてしまうほどの人気店でした。

大甚本店は大テーブルの相席が基本のため、見ず知らずの人同士がこのお店の相席で親しくなり、すき間なく埋まった客席の、客同士による肩寄合う姿や雰囲気こそが人気の秘密でした。
ところが、この人気の理由となっているお店の空間がまさに3密であり、お客さんの数が通常の2割にも届かないほど、もろにコロナによる影響を受けてしまったのでした。

そこで、この窮地を脱するべく導入したのがテイクアウトでした。
惣菜メニューをプラスチック製のパック容器に入れ、『家飲み応援』として安価で売り始めたのです。

大甚本店ではもともと小鉢に盛られた一品料理をセルフサービスで受け取ることに特徴を持たせていましたが、パック容器に詰められたテイクアウトになってもそれほど違和感がないことから、既存顧客にもすんなり受け入れられたようで、毎日のように来店される常連客の方々も数多くいるといいます。

こうした大甚本店の挑戦は既存顧客からのヒットだけではなく、意外な客層獲得にもつながっています。

これまでは毎日満席で入りたくても入れなかったというお客さんが大勢いましたが、テイクアウトで買えるのはとてもありがたいと、近所に住む主婦や若い女性など、コロナウイルス感染拡大前とはあきらかに違う客層も増えたといいます。新たな挑戦が期せずして新規の顧客開拓につながったと言えるでしょう。

また、このような新規の若い顧客が歴史ある人気店のテイクアウトを家でゆっくり味わいながらSNSでも投稿してくれ、新規客の好循環、よい循環が生まれているようです。

 

技術力を活かしてコロナ禍で求められる新たな商品を開発した事例

 

コロナ禍において、これ以上の感染拡大を抑止するために「新たな生活様式」が求められています。企業やあらゆる商業施設、公衆トイレなどにも除菌用アルコールが設置され、すでに見慣れた光景となりましたが、こうした除菌剤も一時は不足状態が続いていました。

そんな中、もともとあった技術力を活かして新たな商品開発に挑戦しているのが、茨城県水戸市にある老舗酒造メーカーの明利酒類です。

明利酒類は創業70年、前身である酒造店時代を含めると江戸時代末期からお酒を扱う歴史ある企業です。
地産地消や地域になくてはならない会社を目標として掲げ、地元の方々を中心に長年愛されてきました。
しかし、生活の豊かさや楽しさを提供するお酒だけではなく、地域の人々が困ったときに力を発揮できる存在にもなることが、近年の企業テーマになっていたといいます。

そんな折、コロナウイルスによる影響で除菌用アルコールのニーズがそれまでとは比べものにならないほどに伸び、消費財メーカーが製造する一般向け除菌剤がどんどん市場からなくなっていきました。
そこで同社内でもともと医療機器メーカーの営業として、病院や介護施設などと取引していた担当者を中心に商品開発が進められ、除菌剤を製造し、新たな事業が生み出されたのでした。

また、こんな事例もあります。

名古屋市西区にある丸安ニットは戦前から続く老舗繊維工場で、高級婦人服用のニット素材や車に使用されるシートなどを主に製造していました。

ところがコロナウイルスの影響で売上が3割以上落ち込み、対抗策としてマスク作りを始めたと言います。
同社の持つニット製品の技術力は高く、伸びて縮みながらしっかりと顔にフィットするマスクはヒット商品となり、落ち込んだ3割の売上をしっかりと補填できたそうです。

さらに夏用として、同社の近隣で作られている美濃和紙を用いた生地で製造したマスクも開発され、多くの消費者の人気を集めています。
美濃和紙を用いた生地は接触冷感の働きを持ち、さらさらし、軽いことから夏用に適しています。
また、この生地を有松絞りで染めた新たな素材でも商品開発が進められ、従来の綿マスクに比べ、抗菌作用や速乾作用に優れている点もヒットに拍車をかけたようです。

 

さいごに

 

いかがでしたでしょうか。

コロナウイルスの感染拡大はこれまでの私たちの生活様式をすっかりと変えてしまいました。また、ビジネスシーンにおいても業界によってはいまだ経済活動の自粛も続き、倒産企業も増えるなど、日々深刻さも増しています。

しかし、これまで見てきた老舗企業によるコロナ禍においての挑戦にもあるように、不の環境でも前向きにとらえ活動している企業もあります。

ぜひ参考にされてみてはいかがでしょうか。

 

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