働き方改革とは、労働環境を見直す大きく見直す取り組みです。
働き方改革は政府にとって重要な政策であるため、厚生労働省は推進のために施行された働き方改革関連法に加え、実現を促す具体的なガイドラインを制定しています。
2018年成立〜2019年4月より施行されている働き方改革の背景としては、少子高齢化に伴う労働者の減少や働き手のニーズの多様化といった問題が挙げられています。
つまり、「働き手の個々の事情に応じて多様な働き方を選択できる社会を目指すことで、働き手の可能性を広げること」が働き方改革の最大の目的です。
「老舗企業」と聞けば、「何十年も経営が上手くいっている企業」とイメージする方もいらっしゃるのではないでしょうか?
老舗企業に明確な基準はありませんが、帝国データバンクや日本老舗サイトでは、創業100年以上、3代に渡って継続している企業が老舗企業と呼ばれる傾向にあります。
では、なぜ長く続いている企業でも働き方改革が見直されるのでしょうか。
老舗企業で働き方改革を行なっている企業を調べた結果、以下のような理由で取り組んでいることが分かりました。
などが挙げられます。それぞれ具体的に見ていきましょう。
老舗企業に限った問題ではありませんが、老舗企業は家族内で代々受け継いで経営をしていることが多いです。
そのため、老舗企業の特に上層部は身内関係者が多くなる、いわゆるファミリービジネス(同族経営)化の傾向があります。
従業員が高齢化することによって、引退や病気をして今までのように働くことが困難になる人も増えてきます。
さらに、介護・福祉業界の人手不足により、50代を越えた従業員は自らの親の介護に回ることも少なくはありません。
その結果、家族の介護が理由で離職する社員も増えてしまいます。上層部の従業員が離職していくと、今まで指揮を取っていた分オペレーションが回りづらくなるので、企業側からするとなるべく避けたいリスクです。
代々企業を守り抜いてきた経営層や上層部と若手従業員で、労働時間の捉え方が異なってくるということです。
特に、残業に対する意識は時代によっても変わってきています。例えば、何としても会社の売上を守りたい経営層と自らの給料を担保できる最低限の労働時間を求める従業員の間には深い溝がある老舗企業もあります。
老舗企業の経営層には、経営に対する熱量が大きすぎるあまり、若手従業員を圧倒してしまう方々もいらっしゃいます。
そうすると、経営や現状に問題が生じた場合でも「何が何でも打破しよう!」という気持ちが若手従業員へ伝染していくことは自然です。
しかし、会社に対する想いの強さから従業員の労働時間の延長や有給休暇の不消化に繋がっていく企業も存在します。
その結果、「この会社にはついていけない…」と従業員の満足度を下げてしまうことになります。どちらが正しいという次元ではなく、歴史ある会社を背負うことにより発生する、老舗企業ならではの問題なのかもしれませんね。
働き方改革を推進するにあたり、働き方改革関連法で特に重要とされている項目が以下の2つです。
『労働時間の見直し』
『同一賃金同一労働』
順番に見ていきましょう。
働き方改革で最も注目されていたのが、労働時間の見直しです。
実は、働き方改革関連法が制定されるまでは残業時間に関する法律の縛りはなく、従業員に上限なく残業を強いることも可能でした。
そこで残業時間の上限を月45時間・年間360時間以内。臨時的な事情があっても月平均80時間以内(月100時間未満)・年720時間以内の上限が定められました。
また、年5日の有給休暇の取得、60時間以上の残業での割増賃金引き上げ、フレックスタイム制の拡充などが定められました。
正規雇用労働者と非正規雇用労働者との不合理な待遇をなくすことが目的です。
同一の企業内で一人一人の待遇により、基本給や賞与などの不合理な待遇差を生じさせないようにします。
不合理か否かの判断基準も厚生労働省のガイドラインにより定められています。
では、近年の老舗企業で先程挙げたような問題に対し、どのように働き方改革を実施しているのでしょうか。実例をもとに2社ご紹介していきます。
1社目は、業務を自動化するソフトウェアサービスを利用して働き方改革を行なった企業です。以降A社としてご紹介します。
創業130年の老舗企業ということもあり、国内に1万人以上の従業員がいる企業です。
A社での問題点として、「従業員の高齢化」がありました。A社では従業員の年齢と人数を人口ピラミッドのようにグラフ化することにより、10年後にどのような状況になっているかを早期に把握できたそうです。
このまま高齢化が進むと、ある時期を境に引退や離職が増えることは間違いありませんでした。そうなった場合、従業員数が不足し深刻な人手不足になると考えたのです。
そこで、業務を自動化するソフトウェアサービスを活用したオペレーションの自動化や、外部リソースまで活用するようになりました。
このことからも全てを機械頼りではなく、機械仕事をできる範囲と人間ができる範囲を分け、それぞれ活用しようという意図が感じられます。
また、A社の関係者の方は「問題を自分事として捉える」ことにより、このような働き方改革に繋がったと発言しています。
2社目は、創業143年の老舗企業の例です。以降B社としてご紹介します。
B社は、有給休暇取得率71%、子どもの学校行事は原則休み、平均残業月約14時間という驚きの企業です。
この企業では、「働きやすさ」で注目を挙げており、企業理念にも「社員第一主義」を掲げているほどです。
B社の代表は、経営危機に陥った際に「1人ではやっていけない」と思い、この環境を作りあげたといいます。
さらに、従業員の中には仕事にやりがいを感じれば残業を苦に思わない人もいるので、社員のモチベーションを上げることが働き方改革だと発言しています。
代表のこのような意志から、有給取得と利益が比例する「お互いさまの文化」が生まれたといいます。
働き方改革とは、労働環境を大きく見直す取り組みです。
労働環境を見直す背景としては、企業によって様々ですが、老舗企業の場合は
・従業員の高齢化
・年代ごとの労働時間への捉え方の差
・経営層と若手社員の温度差
・経営層と若手社員の温度差
などが挙げられます。
また、労働時間の見直しと同一賃金同一労働の2つのポイントが重要になってきます。
特に残業時間の上限設定、不平等な待遇などを無くす動きが高まっていますね。
具体的な企業の取り組み①、②はどちらも良い意味で厚生労働省のガイドライン通りではありませんでした。
老舗企業だけあって独自の企業文化を形成している分、働き方改革に対してもユニークな取り組みを行なっています。
今後も様々な働き方改革の動きが活発になってくると予想されるので、今回紹介した以外の老舗企業の取り組みにも注目していきたいと思います。