大塚家具の衰退から学ぶ世襲問題

otuka_kagu

骨肉の争いと題されて、ニュースなどでも話題になっていた大塚家具の社長交代劇。

実の父親と娘の溝が深くなりすぎたことで、取り返しのつかないほどの対立構造が生まれてしまったことに伴う会社内の混乱は急速な業績の悪化を生じさせました。

結果的に大塚家具は2019年にヤマダ電機の傘下に入ることとなり、事実上の身売りともいえる結果になってしまったのですが、なぜこのようなことが起きてしまったのでしょうか。

今回は大塚家具の急速な衰退から学ぶ世襲問題の難しさについて詳しく解説していこうと思います。

 

創業者を中心としたワンマン経営をしていた先代社長

 

大塚家具は創業者である大塚勝久氏によって箪笥店から独立して始まった家具店でした。

家具店としては例に見ない会員制という独自の販売形態を導入することで、急成長を遂げ家具業界でも認知度を高めた会社です。

会員制で家具という買い替えは少ないが、出費は大きい製品において消費者を顧客として確保することで、売り上げを伸ばし続けたことで当時では日本でも有数も家具チェーン店に発展したのです。

しかし徐々に会員制という販売形態が時代にそぐわなくなっていき、経営状態は悪化していきました。特にイケア・ニトリといった新規家具チェーンが規模を大きくしてきたこともあり、業績は悪化の一路を辿ることに…

そのため2009年に当時社長を務めていた大塚勝久氏が会長に退くこととなり、後継者として娘の大塚久美子氏が社長へと就任しました。

 

娘の改革と父親のワンマン経営の対立

 

娘の大塚久美子氏は、先代の創業者である父が行ってきた販売手法は時代に合わないとして、経営改革を行い一時は業績を改善させることに成功。

しかしこういった娘の経営改革を創業者である父の手法を否定していると考えた勝久氏は、久美子氏を社長の座から退かせ再び社長の座に返り咲きました。

そして以前と同じような手法(娘が社長だったときはカジュアル路線に移行していたが、父親に戻った際には高級思考で高額な商品とそれを売り込むための広告を大量投入。その結果業績は悪化した)で経営を行い失敗してしまったのです。

従来の手法に固執した創業者と時代に合わせた転換を行った後継者の対立

ここまで紹介してきたように、大塚家具は創業から行ってきた経営手法に固執した創業者である父と時代に合わせて事業モデルを変化させていた娘が社長を入れ替わってしまいました。

そのため大塚家具という会社自体も経営方針が二転三転し、従業員もそれに振り回されてしまったために衰退してしまったということになります。

この従来の経営手法に固執する創業者と時代に合わせた転換を行い柔軟にビジネスモデルを変化させる後継者の対立というのは大塚家具に限られた話ではありません。

現在の日本ではどの会社でも起こりうる世襲問題なのです。

 

創業者の会社は自分のものだという意識

 

事業における創業者というのは、往々にして0から1を産み出して事業を開始し軌道に乗せたという経験があるので、自分の経営手法は正しいと考えがちです。

もちろん、会社を創業し後継者に受け継ぐことができるレベルまで成長させることは生半可なことではできません。そのため創業者の自信というのは間違ってはいないでしょう。

しかし一方で時代の流れというのは確かに存在しており、創業者の経営手法では通用しなくなってしまう場合もあるのが事実です。

特に後継者は会社を受け継ぎ発展させるため必要があるので、創業者とは違う手法をとるなど様々な経営改革を行っていくでしょう。大塚家具もそうでした。

時代に適合した変化をしていくために後継者が会社を変革していくのに耐えられないのは誰でしょうか?創業者です。

やはり創業者は自分の会社、自分が育てた会社という気持ちが大きいので後継者が行う変革に耐えることができず、口を出し経営の場に舞い戻るということをしてしまいがちなのが大きな問題になります。

その結果後継者と創業者の対立が生まれてしまうのです。

 

世襲問題を上手く乗り切るためにはどうすればいいのか?

 

それでは世襲問題を上手く乗り切るのにはどうすればいいのでしょうか?
それにはまず創業者と後継者に必要な能力の違いを認識する必要があります。

創業者=企業家と後継者は全く異なる資質が必要

創業者は無から有を生み出すことで、会社を創業し事業を拡大していきます。創業者が現役の間は、ワンマン経営による事業の継続・拡大も上手くいくでしょう。

一方で後継者の場合は、時代に適した経営を行い受け継いだ事業の拡大・維持を行っていくことです。そこには何より柔軟な何事も受け入れる思考が必要になってくるのではないでしょうか。

後継者は必ずしも創業者のようにワンマンをできるような優秀な人物とは限りません。

そのため創業者のワンマン経営状態では、後継者に経営権が回ってきたときに上手くいきません。後継者が経営行っていく際には、ワンマン経営ではなく多くの優秀な人で会社を支えていく形にしないと上手くいかないのです。

後継者も同じようなワンマン経営で行っていくには、資質の面でも不安があり大きなリスクを伴うのです。創業者というカリスマで成り立っていたワンマン経営を後継者にも当て嵌めるのは危険度が高すぎます。

そのため創業者から後継者にバトンタッチを行う際には、ワンマン経営という状態を少しづつ変化させ継がせる準備を綿密にしなければいけないでしょう。

創業者と後継者のコミュニケーションの重要性

上記で解説してきたように、創業者は自分と同じようなワンマン経営を後継者に望むべきではありませんし、後継者もワンマン経営を行う選択をとるべきではありません。

そのため後継者が受け継ぐ際の会社の状態をどのようにしていくか、両者で綿密に相談しながら少しづつ受け継ぐ準備をしていく必要があります。

大塚家具の問題では創業者の大塚勝久氏が「自分が作った会社が何の相談もなく、変えられていく、なぜ話さなかったのか」と話していました。

父・娘間でのコミュニケーションをしっかりと行い、受け継いだ後の会社をどうしていくか話し合って決めていけば避けられた問題だったのかもしれません。

そのため世襲問題を避けるためには、創業者と後継者の必要な資質の違いを理解してお互いコミュニケーションを図ることが重要なのではないでしょうか。

 

大塚家具の衰退から学ぶ

 

父娘の深刻な対立から生じてしまった大塚家具の衰退。

この問題は世襲制度をとっている日本の企業のどこにも当てはまる問題です。創業者が成長させた会社と受け継ぎ発展させる後継者の違いはかなり大きいものになります。

そのため後継者が経営しやすい状態に創業者が協力できるか、準備をすることができるかに世襲問題の解決の鍵は眠っているのではないでしょうか。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でファミリービジネスオンラインをフォローしよう!

Copyright © 2020 family business online . All rights reserved.

Copyright © 2020 family business online .All rights reserved.