デット・ファイナンスを行ったは良いものの、事業が上手くいかないのは困りますよね。
資金調達をする以上は、立てた目標を達成したいものです。
この記事では、どのような流れでデット・ファイナンスを行えば事業を好転させることが出来るのか、適切なケースを交えて解説いたします。
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有利子負債による資金調達に当たるデット・ファイナンス(Debt Finance)には、幾つかの調達手段があります。
それぞれの貸金業者には特性がありますので、良く把握したうえで適したところから借入れを行うことが重要です。
日本政策金融公庫(日本公庫)は、一般の金融機関が行う金融を補完することを掲げた政策金融機関です。
政府が100%出資し、主に中小企業やフリーランスを含む個人事業主などの小規模事業(スモールビジネス)へ支援を行っています。
支援対象は「国民生活事業」、「中小企業事業」、「農林水産事業」に分けられており、提供額は種類によって異なります。
たとえば小規模事業者の場合は「国民生活事業」に当たり、融資限度は一般貸付制度を利用する場合、およそ4800万円になります。
「中小企業事業」に明確な定義はありませんが”年商5億円”を超えたあたりが1つの目安として考えられています。
しかし年商5億を超える場合も、国民生活事業の窓口で相談する企業も数多くあります。
不安な場合は事前に相談を行うこともできますので安心してください。
以下に事業分類ごとの対象、一部融資制度の限度額などを表記します。どの事業に当てはまるか参考にしてみてください。
事業分類 | 概要・融資額 |
---|---|
国民生活事業 | 中小企業、個人事業主(フリーランスを含む)を始めとした小規模事業者を対象にする。一般貸付制度の場合、融資限度額4800万円。その他、新型コロナウイルス感染症特別貸付などあり。 |
中小企業事業 | 企業維持上緊急に必要な設備資金及び経営基盤の強化を図るために必要な長期運転資金。中小企業を対象にする。経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)の場合、融資限度額は7億2千万円 |
農林水産事業 | 農林漁業経営の維持安定に必要な長期運転資金。主業農林漁業者を対象にする。農林漁業セーフティネット資金の場合、融資限度額は1200万、特例あり※ |
※簿記記帳している事業者は、融資限度額の引き上げが必要と判断された場合に限り年間経営費等の12/12以内の範囲内で追加融資される。
参考:日本政策金融公庫HP:https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/index.html
信用保証協会、民間金融機関と協働した自治体によって提供される融資を制度融資と呼びます。
制度融資は中小企業や個人事業主にとって良い選択肢の1つです。
担保や保証人が不要で審査も比較的優しいため、小規模事業者には助かりますね。
銀行の融資(プロパー融資)に比べて低利子な点も制度融資の優れた点です。
ただ、多くの組織が運営に携わっている関係上、融資が降りるまで時間がかかるのも特徴です。
時間に余裕をもって相談した方が良いですね。
銀行融資は銀行から借入を行う方法です。
まず融資と聞いて銀行のイメージが湧く方も多いですよね。銀行融資は格付によって審査を行い、金利、返済期間、返済方法を設定しています。
審査は参考資料が多く必要書類が多種に渡ること、また数字に表れない部分の評価のためにコミュニケーションを小まめに取る必要があります。
私募債は企業が発行する社債の1つで、募集対象を限定して発行される社債です。
保証人や担保を必要とせず、発行にかかる手数料も少なくて済み、償還期限や方法に制約が少ないため、比較的手軽に資金調達が行えることが特徴です。
一方で資金の一括返済の性質を持ち、発行に基準があるのも特徴です。
こうした理由から、資金繰りを目的とした利用には向きません。
以上はデット・ファイナンスの一部で、他にも「社債の発行」「コマーシャルペーパーによる調達」「シンジゲートローンの活用」などが代表的な手法です。
デット・ファイナンスと一口に言っても、このように様々な調達手段があります。
自社の状況に合わせ、どの調達手段が適しているか調べてみてください。
デット・ファイナンスは借入れを行う仕様上、間違った運用を行うと事業継続に差し障る場合があります。
この項目では、負債型の資金調達を行う上で覚えておいた方が良いポイントを解説します。
デット・ファイナンスの借入条件は融資元によって異なります。
貸金業者は悪徳業者を除き、それぞれ特色があります。そのため自社の方針に沿った融資元を選ぶことが大切になります。
借入条件を読む上では、以下の5つに重点を置き、自社と条件と比較してみてください。
・金利
・融資限度額
・返済期間
・返済方法
・手数料
全ての貸金業者が健全な運営をしていることが理想ですが、悪徳業者も存在しているのが現状です。
たとえば金利をはじめとする融資条件の良さから契約を結んでも、事前に説明された条件に特記事項があるケースなどがあります。
このような場合、説明を受けた条件は初期のみで、その後は異常な金利や手数料が要求されるなど、想定外の事態に見舞われる可能性があります。
そのようなトラブルを避けるためにも、契約前には貸金業者が信頼できるか情報収集しておくことが大切です。
資金調達後にリスクを知り、事業経営に差し障るのは避けたいものです。
どの資金調達にも特性とリスクがあります。
ここでは想定外のリスクを回避するため、頭に留めておきたい調達後のリスクを紹介します。
デット・ファイナンスは「負債」扱い
デット・ファイナンスの調達資金はバランスシートで負債として扱われます。
これに伴いバランスシートを提出する機関によっては、経営難を疑われやすくなります。
使い道や計画を説明できれば良いのですが、審査の障害になり得ることは覚えておきましょう。
返済義務が生じる
デット・ファイナンスは負債型(Debt)金融(finance)のため、エクイティ・ファイナンスとは異なり返済義務があります。
契約内容によって返済開始時期など諸条件は異なりますが、返済額が事業運営に影響するケースは珍しくありません。
順調な返済は返済実績として信用機関に反映されますが、相談無く滞納すれば最悪訴訟となります。
返済は必ず行えるようにしましょう。
返済時に利息を加える
返済時、元の金額には利息が発生します。
また、機関によっては更に独自の手数料が上乗せされる場合もあります。
あらかじめ返済コストの計算を行い、実際の返済時に慌てないよう準備しておきましょう。
自己資本比率が低下する
有利子負債となるデット・ファイナンスは分類上、他人資本に当たります。
他人資本の増加は自己資本比率の低下を招くため、第三者からは財務面が弱い企業と思われる可能性があります。
補助金や助成金、金融機関の融資の判断には自己資本比率も材料となるため、利用予定の場合は事前に確認しておくなど、対策を取っておくと良いでしょう。
事業拡大には、適切な規模・タイミングで資金調達を行うことが肝要です。
この項目ではデット・ファイナンスによる借入が適正なケースを紹介します。
事業のスケールを検討している場合に多くあるケースですね。
資金面に余裕がある場合、デット・ファイナンスの効用は大きくなります。
出資元も経営状態が良いことを知っているため、借入条件の交渉余地もあり、理想的な状態です。
詳細な資金計画があればなお万全でしょう。
一定の価値を持つ担保があれば、デット・ファイナンスを行う上で生じるトラブルは最小限に済ませることが可能です。
貸金業者から認知されていれば、融資に難色を示されることも余りないでしょう。
資金の使い道が明確で、安定した売上に結びつくまでのスパンが短い(測定できる)場合、デット・ファイナンスは最適な資金調達手段の1つでしょう。
貸し手にとって「返済までのプロセスが透けて見える」ことは非常に重要なポイントです。
デット・ファイナンスは資金運用に介入されないことが魅力ですが、金融機関や貸金業者が運用方法を気にしていない訳ではありません。プロセスは明瞭な方が良いのです。
利益を出す自信はあるものの、経営方針の介入を受けたくない場合、デット・ファイナンスは非常に有効な方法です。前項に掛かりますが、金融機関を始めとする出資元は、資金調達によって企業が得た資金について口を出すことは余りありません。
この点は、負債によらないエクイティ・ファイナンスと明確に異なる部分です。
一貫した経営方針は理想ですが、実際の経営は遠回りが必要なこともありますよね。
その都度、出資者の賛同を得る説明を行うのは手間なものですし、自社の発言によって縛られてしまえば、経営の負担になる場合もあります。
しかし、デット・ファイナンスにそのような制約はありません。
経営上の判断を自由に行える点でいえば、デット・ファイナンスは随一です。
これは前項までの内容を踏まえた結果論としての話になりますが、デット・ファイナンスはスモールビジネスに向く資金調達になります。
何故ならスモールビジネスは直近で展開する事業規模が小さく、借入総額も低い傾向にあるためです。
この条件はデット・ファイナンスに適したケースの多くを満たします。
借入金額が低ければ資金を用意する難易度も低くなり、担保に求められる価値も相対的に低いもので良くなります。
事業規模が小さい場合、構造も複雑化し難く、結果を出すのも大手企業より早い傾向にあります。
立ち回りが多くなる点でもデット・ファイナンスとかみ合います。
何よりも融資の難易度が低いこと、少額ゆえに返済実績が積みやすい点で他の調達手段を優越します。
デット・ファイナンスは返済を必要とする資金調達ですが、決して恐ろしいものではありません。
経営を自由に行えるのは明確なメリットですし、融資で生じるリスクの多くは、事前計画によって未然に防ぐことが出来ます。
この記事が事業の発展に向かって邁進する一助になれば幸いです。