「ファミリービジネス」もしくは「同族経営」と言った言葉を一度は聞いたことはあるのではないでしょうか。
一般企業と比較しても、ファミリービジネスはワンマン経営で事業を行っていたり、家族内での問題がそのまま会社に直結してしまうイメージがあるので、なんとなくマイナスのイメージを持ちがちかもしれません。
しかし実は、日本という国では上場企業のおよそ53%、全企業の約97%がファミリービジネス(同族経営)で事業を回しており、世界でも屈指のファミリービジネス大国なのです。
そんなファミリービジネスについて、今回の記事では、そもそもファミリービジネスとはどういったものなのか、一般企業の違いはどういう点があるかなど解説していきます。
ファミリービジネスとは、以下のような企業のことを指しています。
「ある特定のファミリー(家族)が会社の株式もしくは経営のいずれか、または両方を支配しているか、会社の経営方針を左右するほどの支配力を有している企業」
ファミリービジネスで事業を展開している企業は、日本では上場企業が約53%、全企業で約97%となっており、ほとんどの企業がファミリービジネスといえます。
欧米でも企業全体で8割近くがファミリービジネスとなっており、実はファミリービジネスの企業がほとんどです。
日本で有名なファミリービジネス企業を実際に見てみましょう。
日本人であれば、誰もが知っているこういった大企業もファミリービジネス企業として事業を展開しています。
またアメリカでもウォルマートやBMWといった、世界有数の大企業もファミリービジネスを行っているのです。
日本や世界でもほとんどの企業がファミリービジネスで経営を行っているということはここまで紹介してきましたが、どういった点がファミリービジネスのメリットなのでしょうか。
一般企業とファミリービジネス企業の違いについてみていきましょう。
ファミリービジネスと一般企業では、経営スピードの面において大きく違いがあります。
一般企業では、会社を所有しているのは株主であり、株主の利益に反するようなリスクのある経営をすることはできません。
しかしファミリービジネスでは、そもそも会社を所有しているのが経営者とその一族なので、反対意見が出る可能性はほとんどないです。
そのため会社にとって大きなリスクがある経営方針であっても、株主の意見を気にすることなく、スピード感をもって経営を進めることができるのです。
ファミリービジネスでは経営者やその一族が会社のトップを占めているので、経営において経営者の意思や理念を一般企業と比較しても統一しやすいというのも大きなメリットです。
そのため経営者が優秀な人であれば、会社にその意志や理念を統一させることによって、安定した経営を維持することが可能になります。
一定した企業意思や理念のもと動くことができるので、既存の顧客とも長い取引や付き合いをすることができるのも大きなメリットと言えるでしょう。
一般企業では、 事業が少しでもうまくいかなくなると、株主が経営陣に対して様々な要求をすることが多いです。
株主の意見に応じて、経営方針をふらふらと変えてしまうと、短期的には利益を出すことができるかもしれませんが、10年後を見据えた長期的な経営をすることは難しいと言えます。
一方でファミリービジネスの場合、そもそも経営陣が支配権を握っているので、短期的な損益などで経営方針を変える必要はありません。
長期的な視点で、ビジネスを進めることができることもあり、場当たり的な対策などではなく長期で安定的な経営をすることができる可能性が一般企業よりも高いと言えます。
ファミリービジネスで事業を展開するにあたっては、必ずしもメリットばかりがあるわけではありません。
経営者やその一族で経営を行うことによって、特有のデメリットも生じてきてしまいます。
そこでファミリービジネス特有のデメリットについて、 以下で具体的に見ていきましょう。
一般企業でも、現経営者の後にどういった人が後継者となるかは、大きな争いの種になります。
ファミリービジネス企業では、後継者や相続問題は一般企業の比になりません。
経営者が事前に後継者をしっかりと定めておかないと、誰が今後経営を行っていくのか家族間で骨肉の争いが繰り広げられてしまうことになり、会社としても不安定な状態が長く続いてしまいます。
ファミリービジネス企業は、特に経営者層の争いというのが、ダイレクトで経営に影響を与えてしまうために大きなデメリットとなりかねません。
ファミリービジネスで事業を行うことによって、創業者や経営者の意思や理念を会社全体に統一することができるというメリットは上記でも紹介しました。
しかしこれはデメリットにもなりかねません。
なぜなら、支配権を握っている経営者やその一族が、時代の流れに適応できないビジネスを行っている場合に、忠告をしてくれる人物がいないからです。
一般企業の場合には、 社外取締役や監査役を取り入れることによって、第三者の視点から事業の妥当性をチェックすることができます。
しかしファミリービジネスの場合には、経営層のトップは経営者とその一族で占められていることがほとんどなので、第三者の目を取り入れて時代の流れに適応できていない場合に、修正するということができません。
閉鎖的な経営でファミリービジネスは回っていることが多く、時代の流れに適応できなくなった場合には、それを修正する人材がいないということは大きなデメリットと言えるでしょう。
一般企業ではさほど問題にはなりませんが、ファミリービジネスの場合、家族とそれ以外の社員の待遇の差というのが大きな問題となります。
家族や一族を重用し、関係のない一般社員には出世する道などが閉ざされているということが起きてしまうと、家族以外の社員のモチベーションにも大きく影響が出てしまうでしょう。
確かに家族を重用し出世させることは、心情的にも理解はできますが、あからさまに待遇の差があると経営者の信頼を失ってしまうことにもなりかねません。
ファミリービジネスの場合には、家族やその一族とそれ以外の社員に待遇の差が激しいと、重要な事業を任せることが出来る人材が不足してしまう可能性があります。
また後継者育成などに失敗した場合には、事業を承継する人がいなくなってしまうために、経営者が高年齢化しても事業を続けなければいけなくなる可能性もあるでしょう。
人材不足や経営者の高年齢化によって、結果的に選択肢のない中で経営者には適しない人材を後継者として選ばなければならなくなるという事態にも陥りかねません。
一般企業では、専門経営者などを外部から呼ぶという手を考えることができますか、ファミリービジネスの場合にはこういった選択肢を取ることができないというのも大きなデメリットと言えるでしょう。
ファミリービジネス企業の場合には、経営者やその一族が一丸となって目標を達成するために意思を統一し事業を行っていくことが可能です。
しかし一方で、家族間ならではの問題や馴れ合いによって、事業がうまくいかなくなるという可能性も大いにあります。
もっともインターネット技術が発達し、ビジネスの速度が著しく早まっている現代社会の中で、しっかりとした基盤を持ったファミリービジネスの企業は、揺らぐことなく事業を展開することができるという大きなメリットがあります。
家族や一族といった確固たる基盤を有しているファミリービジネス企業は、株主の意見などに左右されやすい一般企業とは異なり、今後の移り変わりの激しい現代社会の中で大きな影響力を持つようになるかもしれません。