リモートワークなどが増加し、DX・CXといった言葉を最近良く耳にするようになりました。
経済産業省がDXに関するガイドラインを作成し、2020年にはデジタル庁が発足されたこともあり、国を挙げて進められている政策ともいえるでしょう。
もっとも実際に「DX・CX」という言葉がいったいどういう意味なのか、どのように経営に取り入れればいいのかを把握している方は少ないのではないでしょうか。
なんとなくインターネットやIT、デジタル化を進めることだと曖昧な理解のままにしたままで、きちんとした意味を理解していなければ、今後の経営戦略において大きなデメリットが生じてしまう可能性も…。
そこで今回は「DX・CX」についての基本的な概念と、導入したことによって成功した企業について実際に紹介します。
国の政策として進んでいく「DX・CX」の波に乗り遅れてしまうと、致命的な企業としての損失を負ってしまいかねません。
ぜひ今回の記事を参考にして、経営に取り入れるなどしてみてはいかがでしょうか。
最近日本で目にするようになったDXですが、実は最先端の概念であるというわけではありません。
DXはスウェーデンの大学教授によって提唱された言葉であり、およそ10年以上前から既に使われているものなのです。
そこでまずはそもそもDXとはどういった意味なのかについて解説していきます。
DXについて
DXは正式名称を「デジタルトランスフォーメーション」といいます。
意味は「IT技術を人々の生活の中に浸透させることによって、生活の質をより良い方へと導く」というものです。
また現在経済産業省が発表している、DXに関してのガイドラインでは以下のように表現されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(2019年7月31日 経済産業省発表 DXに関するガイドラインより引用)
ここまで紹介したDXに関しての意味、そして経済産業省が発表したガイドラインを合わせて解釈すると以下のようになります。
発達したIT技術を利用することによって、人々に有益なサービスやビジネスを創造すること
既存のビジネスなどをより簡単に利用しやすくすること
今まで必要だった単純作業を、DXの導入によって無くすことで重要な業務にリソースを割り振ることを可能にすること
DXと聞くと難しいデジタル用語だと考えてしまいがちですが、要はデジタル・IT技術を利用することでより豊かな生活を送れるようにしていこうということです。
概念だけでは分からないという方のために、DXを具体的な例とともに紹介していきたいと思います。
以前は写真を撮る際には、フィルムカメラを利用していた時代がありました。
しかしその後デジタルカメラが登場。
いちいち現像などしなくてもデータとして写真を残すことができる時代へとなったと思ったら、あっという間に現在では携帯電話・スマートフォンなどで、カメラよりも綺麗な写真を簡単に取れるようになりました。
このスマートフォンなどの発達によって写真を取るということから、他人と写真を共有していったこともない場所や人ではみることのできない風景も簡単にインターネットを介して見れるようになったのです。
DXはデジタルカメラやスマートフォンなどの電子機器を導入するという点ではなく、この新しい技術を使って「他人との共有・シェアという便利で有益な習慣を世の中に拡散する」というのが重要な点になります。
ただ単純にテクノロジーを導入して終わりというわけではなく、それをどのように活用するかがDXの鍵なのです。
なぜこのような「DX化」を日本は進めようとしているのでしょうか。
現在日本は世界の国と比較しても、デジタル化がかなり遅れている「IT後進国」になりつつあります。
そのためDX化を世界のトップレベルまで持っていくことができれば、大きな成長を日本という国は遂げることができるでしょう。
特に中小企業がIT技術を導入することによって、業務効率のUP・コア業務への集中・新規ビジネスの展開などを行うことによってもたらされる経済効果は計り知れません。
上記でも紹介した経済産業省の発表したレポートによると、もし中小企業を中心に日本の企業がスムーズにDX化を進めていったとすると、約12兆円近くもの利益が出るといわれています。
逆に考えると、日本の企業がこのままの状態でビジネスを続けていると、12兆円近く損失が出てしまうということです。
こういった背景もあり、日本は急速に国が先頭となりDX化を進めているということになります。
CXについて
ここまで「DX」について詳しく解説してきましたが、似たような言葉で「CX」というものがあります。
言葉は似ているのですが、その意味は全く違うので以下で詳しくみていきましょう。
CXは正式名称を「カスタマーエクスペリエンス」といい、直訳すると「顧客体験」のことを指しています。
詳しくいうと、企業が商品やサービスを市場に出して顧客が購入・利用する際に、どのような体験・経験をしているのか、購入・利用を決めた理由や企業に対してのイメージはどういったものかを総合的に含んだものが「CX=顧客体験」です。
DXの時と同様に、CXも具体例とともに見ていきましょう。
ここでCXの具体例としてあげるのは「apple製品」です。
appleといえば、言わずと知れたiphoneを中心に様々な最先端の電子製品を世に生み出し続けています。
日本でもスマートフォンのシェア率NO.1といわれているiphoneですが、1番優秀なスマートフォンであるか顧客は購入するのでしょうか?
もちろん優秀で使いやすくサポート体制も揃っているから使うという側面もありますが、それだけではありません。
appleがiphoneを通じて世にもたらそうとしているのは、生活の豊かさや利便性、価値観などを総合したものになります。
iphoneの購入前から使用後における、顧客の新しい体験がappleをリピートする理由となっており、これがCX=顧客体験を象徴とするものです。
CXが重要視されるようになった背景
DXと並んでなぜこのようなCXが重要視されるようになってきたのでしょうか。
現在ではインターネット技術が発達したことによって、顧客のニーズや求めるものが多様化しています。
そのため単純に「価格競争」「革新的なサービス」といった文言だけでは、競合他社との差別化を図ることはできなくなっているのが現状です。
また高齢化社会が進んでいることもあり、従来でも重要視されていた顧客の獲得〜リピーター化がさらに重要性を増しています。
そんな中でCXを向上することによって、顧客の人生をさらに豊かなものにして、リピーターになってもらうためにCXを企業が重視するようなったのです。
DXとCXの共通点とは
DXはIT技術を導入することで、人々の生活をさらに良くしていくというものでした。
一方でCXは、企業が提供する商品・サービスを通じて顧客が経験するものや体験などを総合的に包有したものになります。
つまりDXとCXは共通して、人々の生活を良くしていくものであるという点には変わりありません。
DX化を進めることで、さらに豊かで便利な生活を顧客に提供して、新鮮でかけがえのない経験(CX)をしてもらうことで、企業の顧客・リピーターになってもらうという両輪関係になっているのです。
企業が今後成長していくうえでは必要不可欠なものといっても過言ではなく、DX・CXのどちらが欠けてしまったとしても上手くいかないことが容易に想像できるのではないでしょうか。
今後DX化が進んでいく日本の中で、CXも忘れず重要視することができれば、企業として加速度的な成長を遂げることができるでしょう。
DX・CXを経営に取り入れた成功事例
実際にDX・CXを経営に取り入れることで成功した企業はどういったものがあるのでしょうか。
以下で詳しく見ていきたいと思います。
DXの成功事例としてまず挙げられるのが、ZOZOTOWNです。
インターネットでショッピングをすることが当たり前になっている世の中ですが、こと「アパレル」というジャンルは顧客にとって中々購入しづらいものでした。
サイズが合っているのか、自分が着た時にどんな感じなのかという問題点はさることながら、ブランドが数多く存在しているので、いちいちブランドごとにHPを見なければいけないというのも手間なのがネックでした。
しかしZOZOTOWNはそういった悩みを解決して、家にいながらも様々なブランドのアパレル商品を1サイトでみることができる仕組みを作ったのです。
成功の理由はこれだけではなく、顧客のことを考えた行き届いたサービスにもあります。
試着ができないアパレルは、どうしてもサイズが合わない・似合わなかったので返品したいというのがつきものです。
そこでZOZOは返品を認めることで、アパレルを買いやすく身近なものにすることに成功しました。
そのほかにも商品をさらに買いやすくするために、自身の身体に合ったものがわかるようになる「ZOZOSUIT」やコーディネートの例をみることができるアプリなどを出すことによって、顧客のリピーター化に成功しています。
DXとCXを上手く活用して成功した企業の代表例として、学ぶところが多くあるのがZOZOの大きな特徴です。
DXの代表例として忘れてはいけないのが、誰もが一度は利用したことがある「Amazon」です。
Amazonは元々本の買取販売サービスを行うところから事業をスタートさせました。
もっとも現在では本は取り扱っているものの中でも、ほんの一部でしかありません。
家電製品から化粧品や生活雑貨まで、様々なものを取り扱っている世界最大のECサイトとして、現代の生活には欠かすことのできないものとなっています。
AmazonはECサイトには欠かすことのできない「おすすめ機能」や「クチコミ」などを早くから導入した企業です。
自分が買った商品と同じものを買っている顧客は、他にどんなものを買っているのか知らせてくれるおすすめ機能。
実際に購入した製品を使ってみてどのような感じだったか、他の人の実体験を知ることができるクチコミ。
こういった様々な施策を取り入れることで、世界一の企業として成長を遂げたのがAmazonです。
DXはもちろんのこと、顧客の体験を知ることができる、かつ同じ商品を買った人はこんなものも買っているとリピーター化にもつながるであろう「CX」に関する施策も数多く行うことで成長を遂げることができたといえるでしょう。
DXとCXを経営に取り入れるにあたっては、まずこの世界一の企業であるAmazonから勉強してみるのもいいかもしれません。
今後日本ではDX化の波が襲いかかり、中小企業は否応なく巻き込まれていくでしょう。
日本という国がデジタル庁を作ってまで進めていこうという政策でもあるので、避けて通ることは間違いなくできません。
そんな中でDXだけを重視しては、企業は生き残ることはできません。
DX化が進めば、価格競争や革新性といった単純なところだけで勝負しては勝てない世の中になっていくでしょう。
そのためCXも重視して、顧客を獲得〜リピーターになってもらうまでの過程を怠らずできるかが、今後生き残れるかのポイントになります。
DXを経営に取り入れる際には、CXという視点も忘れることなく企業としての経営戦略を練ることが必要不可欠です。
今回紹介した具体例を参考にして、自社だけのCXの強みを見つけてみてはいかがでしょうか。