2020年は日本だけではなく世界中でも、新型コロナウイルスの感染拡大によって経済の悪化に様々な企業や国が苦しむ年となりました。
まだまだ収まらない新型コロナウイルスの感染拡大は、今後も世界中の国や企業の経済活動に大きな影響を与える可能性が高いといえるでしょう。
そこで今回は2021年の経済状況はどうなるのか、様々な側面から予測をしていくとともに、ファミリービジネスを取り巻く環境はどうなるかについても考察していきたいと思います。
2021年の経済予測をしていくにあたって、欠かすことができないのが新型コロナウイルスの終息についてです。
この記事を執筆している時点の2020年12月では、イギリスで世界初の新型コロナウイルスに対するワクチン投与が始まり、少しずつ世界中で終息に向けての動きが始まっているかのように感じられます。
しかし日本では感染拡大の第3波が来ているように、まだまだ予断を許さない状況が世界中で続いているのも確かです。
そのため2020年の12月時点で予測できる新型コロナウイルスに関する世界の動きとそれに伴う経済予測は以下のようになります。
まず2021年の4〜5月までには、感染拡大の初期に行われたロックダウンなどは行われないものの、2020年の10〜12月のような人々の経済活動が制限された状況が続くのは間違いないでしょう。
例えば日本では、2020年の10〜12月は一時的に人々の経済活動が回復したものの、感染拡大に伴い飲食店の営業時間短縮や自粛が呼びかけられるなどの状況が続いていました。
一度感染が落ち着いて、人々の経済活動が復活し人の往来が激しくなることによって、再び感染拡大が進んでしまうというのは、しっかりとしたワクチンが作られるまではやむを得ないことだといえるでしょう。
そのため経済活動の復活〜自粛による制限という状態が、繰り返し訪れることが予測できます。
最もこういった状況も2021年の夏以降には、欧米を中心にワクチンが進歩することによって少しずつ終息に向かうことが期待できます。
そのため2021年は、年の初めから半ばにかけては経済状況が制限された状態であったとしても、ワクチンの進歩によって少しずつ上向きになっていくと予測することができるでしょう。
アメリカ大統領選に勝利したバイデン政権が正式に誕生した場合、世界経済に大きな変化をもたらす可能性があります。
そこでバイデン政権が発足した場合の、現時点で予測することができる変化について以下で詳しく見ていきましょう。
アメリカは新型コロナウイルスの感染拡大によって、致命的な打撃を受けている国の1つです。
例えばアメリカ有数の都市ロサンゼルスでは、2020年12月時点で毎日新規感染者が1万人を超えており、予断を許さない状況が続いています。
アメリカは人口も多いので感染者数も比例的に多くなってしまっていますが、その負担は医療現場にも大きくのしかかっているのが現場です。
ロサンゼルスでの陽性率は約20%近くにまで達しており、病院はすでに患者で埋め尽くされている状況になります。
こういった状況では経済を再生するといったことは2の次であり、まずは感染者数を食い止めることや重症化する患者を看護することが要求されるので、本格的な経済の再生に取り掛かるというのは難しい状況と言えるでしょう。
アメリカでも新型コロナウイルスに対するワクチン接種を段階的に進めていく方針で動いていますが、日常生活が戻ってくるまではまだまだ時間がかかることが予測できます。
そのためバイデン政権が発足してからも、コロナウイルスに対する対策がまずは優先されアメリカ経済の再生というのはその後になるのではないでしょうか。
バイデン氏は大統領選における公約でも、トランプ政権でないがしろにされていた環境や気候変動に対する対策に力を入れていくことを発表しています。
特に気候変動対策は経済再生の柱としても考えられており、莫大な金額が投じられることがプランとして掲げられているのも特徴です。
例えばバイデン氏は、老朽化した様々なインフラを再建すると共に気候変動に対する耐久性を高め、大気や水質汚染を防止するための公衆衛生を改善させることを狙っています。
こういったインフラの再建にはアメリカ国内の労働力や国産の資材が使用されるので、それにより何百万といった雇用が創出され、持続的な経済成長の基盤とすることも可能です。
またインフライの再建に伴い、通信網の整備も進めるとしておりアメリカ国土全体に5Gの通信網を整備することによって、国内でのインターネット技術に関するイノベーションを誘発することも目論んでいます。
気候変動対策に基づくインフラ再建や様々な対策が行われた場合、アメリカ経済の再生に大きく役立つことを予測できます。
バイデン政権の外交政策もまた世界経済に大きな影響を与えることを予測できます。
外交政策では EU諸国といった同盟国との関係修復を急ぐことはもちろんのこと、中国に対するアプローチも大きな関心のひとつです。
アメリカ国内やほとんどの有識者は、バイデン政権になったとしても中国に対する強硬路線は変わらないと予測しており、 現在の対中政策は大きく変わらないでしょう。
もっとも日本の貿易相手として一番の相手は現状中国であり、中国に対してのアメリカの姿勢がどういったものになるのかによって日本経済も大きく状況が変わっていく可能性も考えられます。
そのため日本としては実際にバイデン政権発足後の中国に対する外交政策を、注意深く見守る必要があるでしょう。
日本経済の予測をするにあたって欠かすことができないのが、日銀の動きです。
2021年に日銀はどういった動きを行うのでしょうか。
結論から言うとおそらく日銀は現状維持を貫くことが予測できます。
確かに長い金融緩和によって、銀行収益が圧迫されたことを考慮し金利を引き上げるのではないかという考えもありますが、2020年11月に「特別付利」を行ったことで対処済みと考えることができ、必要性も下がっていると言えます。
そのためおそらく物価目標2%に近づくようなことが起きない限り、日銀としては現状維持であまり大きな動きは起こさないということが2021年の日銀の動きの予測の総括です。
アメリカの政策金利がどうなるのかは、世界中の市場が注目しているトピックです。
そのため2021年の経済予測をするにあたっても、 アメリカの政策金利が今後どうなるのかについて語る必要があるでしょう。
2020年11月のアメリカ雇用統計によると、アメリカの失業率はおよそ6.7%となっており当初予測されていたものよりも下回っており、コロナウイルスによる打撃から少しずつ回復していることが分かります。
新型コロナウイルス感染拡大前の失業率が約3.5%前後となっているので、これを一つの目標とすると、アメリカが金融緩和の手を緩める方針をいつ定めてもおかしくはありません。
もっとも FRB( 連邦準備理事)は、2023年末までの政策金利をゼロに据え置きすることに関して、コミットしているので今後3年は政策金利が大きく動くことはないかもしれません 。
最も失業者数が低下し経済の回復が順調に進んでいけば、金融引き締めが行われることも念頭に置かなければいけないので、アメリカの失業率や景気がどうなっているかはこまめにチェックする必要があります。
日本でも新型コロナウイルス感染拡大によって、様々な老舗企業や中小企業といったファミリービジネスで事業が行われている企業の倒産が相次いでいるのが現状です。
業種によっては致命的なダメージを受けていることもあるのはもちろんですが、一方でコロナウイルスが齎した社会の変化は、ファミリービジネス企業にとっては事業改革を行うチャンスにもなり得ます。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大によって、日本でも多くの企業が売上や利益を大幅に落としていました。
100年に1度といわれていた「リーマンショック」を軽く上回る大きな社会情勢の変化は、確かに企業にとってマイナスな面も多いことは否めません。
しかし一方でファミリービジネスを行っている企業にとっては、事業を改革していくチャンスでもあります。
例えばこういったコロナ禍では、逆に事業承継をスムーズに行うチャンスでもあるでしょう。
ファミリービジネスではない一般企業にとっては、前例のない大きな変化に対応するためには様々なしがらみがあるので、なかなか変化が進まないという側面があります。
しかしファミリービジネス企業にとっては、事業は家族や親族で執り行われることが多いので、大きな変化に対応する際にもスピード感をもって対策をすることが可能です。
また経験したことのない状況に、後継者が立ち向かわなければいけないというのも、貴重な経験になり、またしがらみのない後継者は柔軟な経営改革をできる可能性もあります。
そのためファミリービジネス企業にとっては、こういったコロナ禍という誰も経験したことのない状況において、様々な対策をスピード感をもって行い、変化に柔軟に対応できる後継者を会社の内部に招き入れることができるというメリットもあるといえるでしょう。
例えば、ある有名な老舗和菓子メーカーは、1995年の阪神大震災の際に現経営者が後継者に事業承継を行うことを決断しました。
その老舗和菓子メーカーは、関西に本社を置いていたので、工場や店舗に大きな被害を受けるばかりか、大地震による交通網の乱れによってそもそもの原材料の調達までも不可能になるという状況になってしまったため、売上や利益の見通しが立たない状況に立たされていたのです。
こういった状況の中で現経営者から後継者に対して、事業を復旧するプロジェクトが任されたこともあり、逆境の中で後継者が事業復旧を行いました。
こういった逆境の中で事業復旧に努めた後継者は、従業員や周りの人々から信任されるようになり、新しい時代の経営体制を早々に構築したのです。
このように逆境での事業承継を行うことによって、後継者と従業員が協力して事業を行うことで新しい代の経営体制を早期の段階で確実にすることができます。
こういった点を参考にすると、コロナという逆境もうまく活用すれば、ファミリービジネス企業にとって大きなチャンスにすることができると言えるのではないでしょうか。
上記の具体例では、阪神大震災におけるファミリービジネスの事業承継が成功した例を紹介しました。
しかしこれはコロナ禍での事業承継でも当てはまるでしょう。
新型コロナウイルス感染拡大という世界でも経験したことのない未曾有のパンデミックの中では、企業として何を行うことが正解・不正解なのか明確には分かりません。
そのため事業承継直後の後継者であっても、新しいことに挑戦することができる環境ができているといえるでしょう。
コロナウイルスという特殊な状況は、企業という大きな組織を一つにまとめる効果もあります。
一週間後には社会情勢が大きく変化しかねない状況に置かれている間は、通常時には起こりえないほどの団結力が期待できるので、後継者がしっかりと事業に取り組むことができれば、アフターコロナの世界でも事業をうまく続けていくことができるでしょう。
また後継者がコロナという特殊な状況で事業を承継することによって、 経営危機を肌で感じられることができるのも大きな経験となります。
後継者はファミリービジネスを受け継ぐにあたって、企業家としての能力も身につけなければなりません。
そのためにはファミリービジネスの伝統を受け継ぐというだけではなく、経営危機を感じながらもイノベーションを起こすような人材になることが必要になります。
コロナ禍という特殊な状況で事業承継した場合、後継者は不安定な社会状況の中で今までの事業だけではなく新しい事業などを生み出す必要にも迫られるでしょう。
その結果事業を持続的に受け継ぐだけではなく、経営危機を感じながらもリスクを取って新しい革新的な事業を生み出す人材に後継者はなることができるのではないでしょうか。
今回は2021年の経済予測とファミリービジネスを取り巻く環境について考察してきました。
まだまだ新型コロナウイルスの感染拡大が続いている世界では、経済の再生や回復を大木組み込むことはできないでしょう。
しかしそれでも少しずつ経済が上向きになっていく要因は見られるので、ワクチンの摂取が進んでいくなどした場合、来年の中頃には経済が回復していく可能性もあります。
そんな中でファミリービジネスを行っている企業は、 ピンチではなく事業改革を行うチャンスにもなり得るということを忘れてはいけません。
こういった不安定な状況で、後継者に対してファミリービジネスを事業承継することによって、新しい時代に向けて動き出すということもできます。
不安定な経済状況であるからこそ、リスクを取って変化をするという選択肢を取れる企業だけが生き残ることができるのかもしれません。