新型コロナウイルスが経済に大打撃を与えています。
もちろん例外的に伸びている業種や企業もありますが、多くの企業が損害を受けていることと思います。
本稿では新型コロナ禍以前の日本の経済状況や、リーマンショックとの比較を持って、今後伸びる事業と衰退する事業について、また日本の老舗企業が今後生き抜いていくための方法を考察していきます。
まずは以下の資料をご覧ください。
出典:内閣府
直近のマイナス7.8%も衝撃的な数字ですが、2019年10-12月期のGDP成長率は実質でマイナス1.8ポイントを記録していました。
ダイモンドプリンセス号が横浜港を出たのが2020年1月20日ですので、新型コロナ発生前の数字です。
消費増税などが要因と言われてはいますが、何であれ新型コロナの前から日本経済は衰退し始めていたのは事実です。
新型コロナの経済への影響はこれから顕在化していくことが容易に想像できるため、今後もかなり厳しい経済不況が続くと考えられます。
また、経済を成長するために必要不可欠なのが人口増です。
日本の高度経済成長は日本人の勤勉さや優秀さという文脈で語られることが多く、その部分もあることは確かですが、人口ボーナスなしでは成立しないものでした。
人口ボーナスとは簡単に言うと、働く人が増えている状態で、経済成長を大きく促進しますが、周知の通り日本の人口は1990年代初頭にピークを迎えており、人口は減少を続け、現在は経済成長を阻害する人口オーナス期と呼ばれるフェーズに入っています。
人口を維持するために必要な合計特殊出生率は2.08と言われていますが、2017年のデータで1.43。
なにも起こらずとも人口減は確実に起こる未来だったのですが、新型コロナショックによりこの少子化も加速することが予測されており、厚労省が緊急調査に乗り出すという報道も出ています。
出典:読売新聞オンライン
つまり、大前提として日本はほぼ確実に経済不況状態に突入していくという認識を持つ必要があります。
リーマンショックと新型コロナショックの違いはいくつかありますが、ここでは2点取り上げたいと思います。
順番とは、影響が出る業種の順番です。リーマンショックはその名の通りリーマン・ブラザーズという投資銀行が破綻したのが発端です。
ビジネスや経済に明るくない人にとってはあまり関係ないことのように受け取られましたが、わかりやすいところでは海外の需要が減り、製造業の業績が悪化し、派遣切りや賃金の減少が起こり、飲食店などのローカルビジネスに影響が出ると言った順番でした。
新型コロナショックでは、日経平均もNYダウも一時大きな落ち込みがありましたが、現在は持ち直しています。
米大統領選や日銀の買い支えなど様々な要因があると言われていますが、金融市場は持ちこたえていると言えます。
逆に影響が真っ先に出たのは観光・宿泊業や飲食業などのローカルビジネスでした。
この先雇用助成金などで持ちこたえている企業の倒産やリストラ、採用抑制も予想され、まさにリーマンショックとは逆の順番で影響が出ていくと考えられます。
もう1点の「社会構造の変化」ですが、リーマンショックに関しては「元の状態に戻った」といえますが、新型コロナショックについては完全に元に戻るとは考えにくいという言説が有力です。
良くも悪くも今回のことで、企業や人々が様々な無駄に気がついてしまいました。
リモートワークやリモート飲み会は新型コロナが落ち着いた後も行われるでしょう。
となれば移動や宿泊、飲食などに影響が残るのは確実です。
非常に象徴的な出来事として、長年医師会が反対してきたと言われる遠隔診療も今回認められました。
こういった前提をもとに今後の事業運営を考えていく必要があります。
具体的に伸びる事業ですが、前述の前提よりキーワードが浮かんできます。オンライン、リモート、デジタル、シェアリング、D to C、C to Cなどです。
この辺りで強いのはやはり米GAFAM(Google, Apple, Facebook, Amazon, Microsoft)です。
先日GAFAMの時価総額が、東証一部の全ての企業の時価総額合計を超えたという報道は記憶に新しいところです。
GAFAMほど有名ではありませんが、中国のBATH(Baidu, Alibaba, Tencent, Huawei)も同様です。
オンライン会議システムを提供するZOOMや定額で映画やドラマを見られるNetflixなどはコロナショックのなか株価を伸ばしていますので、今まであったものをオンラインに切り替える事業は全体的に有望と言えるでしょう。
よく報道されている教育や医療だけでなく、旅行業界ではオンライン宿泊と言って、ZOOMなどで旅行の雰囲気を伝えるという新しい試みもされています。
感染防止という観点から現金から電子マネーへの移行も進むでしょうし、あらゆるものがデジタル化されていきます。
また、AirbnbやUberなど、日本ではなかなか浸透していかなかったシェアリングエコノミーですが、ここへ来てUber eatsが存在感を見せています。
飲食店が独自で配達員や車両を用意するのではなく、時間の空いている人が配達を担うシステムはある意味で従業員や車両のシェアリングと言えます。
リモートワークと人材シェアリングの相性も良いクラウドソーシングも盛り上がっています。
日本ではランサーズやクラウドワークス、ココナラなどが有名で、正社員を雇うのに比べて遥かに小さなコストで仕事を依頼できます。
こういったサービスを運営したり、上手に活用できる事業は今後も期待できそうです。
新型コロナショック以前より注目されていた分野ではありますが、D to CやC to Cもオンライン化、また今後予想される所得減とも相性が良いと言えます。
D to CとはDirect to consumerで、生産者が消費者に直接届けることで、より高いコストパフォーマンスを実現するものです。
現状の日本ではアパレル系のメーカーが多い印象ですが、書籍も出版社を通さずAmazonで電子書籍を直接販売できるAmazon direct publishingというサービスがありますし、芸能人が自らYouTubeチャンネルを持ち出していることを見ると、直接というのは大きな流れになっていることがわかります。
C to CはConsumer to consumer。消費者が消費者に対して販売するサービスです。古くはオークションサイトのヤフオク!、最近ではフリーマーケット感覚で売買できるメルカリや、アマチュアでもハンドメイド作品を売買できるminneも伸びてきています。
シェアリングエコノミー、D to C、C to Cに共通するのは、「中間コストを排除することで高いコストパフォーマンスを実現する」ことです。
従来は中古の本を買うためには古書店を介する必要がありましたが、メルカリを利用することで、より安く買い、より高く売ることが可能になりました。
メルカリの手数料は販売側が10%ですので、送料を考慮しても古書店より高いコストパフォーマンスを得られます。
今ある中間マージンをカットして直接届ける事業や、直販サイトなどの仕組みを整備する事にも期待が持てそうです。
この先厳しい事業を考える際もキーワードは同じです。
オンライン化出来ない、新しい生活様式に含まれない、中間マージンを排除できないような事業は難しいでしょう。
コロナショック以前も厳しかった業界ではありますが、百貨店や書店、新聞販売店などが真っ先に思い浮かびます。
共通点は「個体差が無いものを固定費をかけて売っている」点です。
ウインドウショッピングや表紙を眺めて本を選ぶことに根強いファンはいますが、再販価格に守られている書籍ですらネット通販に押されて、店舗数が減少を続けています。
ましてやネット通販より高い価格で販売しているリアルの小売店はより厳しくなるでしょう。
また、実際に人の移動が無いと成り立たない交通、宿泊業界も新しい生活様式によるダメージは不可避です。
リモートワークに切り替えても業績には影響がなかったとして、オフィスの利用をやめる企業も出てきていますし、アフターコロナの世界では不必要な出張も激減するとみられ、旧来通りのビジネスモデルでは厳しそうです。
リーマンショックの時は失業率が元の水準に戻るまで4年かかりました。
新型コロナショックは実体経済を直撃した上、欧米では多数の死者が出ていることもあり、リーマンショックより長引くという予測も多く出されています。
日本の老舗企業がこれからの時代を生き抜いていくためには、この変化の局面で人々の新しい生活や考え方に寄り添い、今持てる商品・技術や顧客基盤を最大限に活用し、顧客の新しいニーズに応えていくため事業モデルを変革していくことが必要です。
大きな転換期となり、それぞれの経営者が大きな判断を迫られている局面かと思います。まずは生き残り、そしてアフターコロナの世界でも利益を生み出す事業を作るために本稿が少しでも参考になれば幸いです。