東京人材は知能(IQ)が高く、優秀です。
なぜなら、東京のように人が集まるところは情報が多く、その情報に優秀な人材が集まるからです。
実際に、東京の人口は1300万人であり、地方の人口の10倍以上です。また、大企業や専門性の高い企業も集まっています。
つまり、東京で働くためにはある程度の知能(IQ)や専門性が重要になります。今回は新人の中でも「東京人材」の特徴や育成のポイント、指導者が東京人材に対して持つべき視点について分析してきます。
東京人材の特徴を分析する前に、認知能力と非認知能力を理解することが重要になります。
認知能力とは知能(IQ)などの数値化できる力、非認知能力とは他者と協同する力、情動を制御する力、コミュニケーション力などの数値化できない力を意味しています。
この言葉を有名にしたジェームズ・J・ヘックマン(2000年ノーベル経済学賞受賞、シカゴ大学経済学部特別教授)らの発表で、「非認知能力は認知能力の発達を促すが、その逆はない。」と結論付けています。
つまり、東京人材の多くは勉学を得意とするものの、コミュニケーションは苦手である可能性が高いということです。
もし、あなたが東京勤務で新人を育成するのであれば、コミュニケーションを主体とした育成方法では必ず限界がきます。
知能(IQ)が高い人材の特徴を知ることで、伸ばすべきポイントや注意すべきポイントが明確になります。
知能(IQ)の高い人材の最大の特徴はプライドが高いことです。
その背景にあるのは努力です。
発明家トーマス・エジソンも「天才は1%の才能と99%の努力だ」と明言しています。高い知能(IQ)は努力によるもので、それだけ努力家が多いということです。また、幼少期に受けた教育も大きく影響します。
親から自己肯定され続けた結果、失敗や挫折の抗体はつかず、自己防衛が働きます。
その自己防衛がプライドを高くします。
つまり、自分の中で「できない」という部分に対して過剰に拒否反応が起こるということです。
感情に左右されないのも強みです。冷静でいられるのは物事を論理的思考に落とし込む能力があるからです。
例えば、何かトラブルが生じても、「どうしよう」「ヤバい」という感情よりも、「なぜ」が先行します。
その「なぜ」が物事を冷静に捉え、問題解決の糸口となります。
つまり、東京人材は物事の洞察力に長けているということです。
この洞察力が感情よりも思考を優先させ、切り替えの速さを生んでいます。
先ほどの「冷静」と関連します。
冷静でいられるのは論理的思考を備えているからです。論理的思考は将来を見据える力になります。
なぜなら、物事を論理的に捉えられれば、自分に必要かそうでないかを判断できるからです。
東京人材はその判断を自身の将来像と照らし合わせています。
そこで必要ないと判断したものは明確に「興味ない」と割り切っています。
「ハイスペック男子・女子」という言葉をご存知でしょうか。
知能(IQ)以外に、美形、スポーツ万能、頭の回転が速い、説明がわかりやすい、など。
日本語では「高性能」を意味し、この言葉はモノに使われます。
AIロボットのように人間味に欠ける印象を与えます。
冒頭で東京人材はコミュニケーションが苦手と説明したように、相手に感情が伝わりづらい一面もあります。
つまり、東京人材は無意識に「感情」を抑え込む傾向にあります。
東京人材の育成ポイントを「伸ばすべき」と「注意すべき」に分けて解説します。
①仕事を任せて思考力を育てる
東京人材であれば、新人でも仕事を任せましょう。
なぜなら、仕事を任せることで強みである思考力の向上が期待できるからです。
多くの指導者は新人の能力を見ず、新人という枠組みで囲い込み、何もさせません。そこで、新人が指示を待つようになってしまえば、徐々に思考力は衰えていきます。それを避けるため、仕事を与えて思考力を鍛えましょう。
新人に仕事を任せる注意点として、「報告」を怠らないよう義務付けましょう。
トラブルの対処が後手になるのを防ぐためです。
②サンドイッチ方式を使って自己肯定感を与える
サンドイッチ方式とは「肯定」→「指導」→「肯定」です。
指導の最初と最後に相手を褒めて、聞く耳を持たせる方法です。
効率的に指導を受け入れさせる効果があります。
まず、指導する前に相手の考えや行動を褒めます。
そして、核心的な部分に触れて指導を行います。最後、再び導入時と同じように褒めます。指導とは相手に直すべき点を伝えることの繰り返しです。
お互いの心にストレスをかけます。
つまり、サンドイッチ方式を用いることでストレスを軽減し、さらに自己肯定感を与えます。
サンドイッチ方式は東京人材の特徴である失敗や挫折を嫌うという部分に対して有効です。
③無駄を省いて作業効率を上げる
皆さんの職場には無駄なルールはありませんか。
無駄と気付いてもほとんどが是正されません。
つまり、「人は環境の子なり」の通り、その環境に染まっていきます。
東京人材はそこに敏感に反応します。
「決まりだから」や「昔からあるから」などは指導者の権威性を薄れさせます。
東京人材の「気付き」に耳を傾け、新人の新鮮な視点を参考に無駄を省く作業も必要です。
①プライドは折らずに削る
プライドは折るものではなく、削るものです。
なぜなら、プライドを折られて立ち直れなくなる人材もいます。
東京人材は精神的に繊細な一面もあります。
方法を間違えると、相手の人生を左右する可能性があります。
プライドを削る方法は「知らない」「わからない」と言える環境を作ることです。
歳を重ねるにつれて言いづらくなる言葉です。
新人から歩み寄れるように、「いつでも聞いて」と口癖のように伝えましょう。
最初は羞恥心が邪魔することもありますが、根気よく寄り添っていきましょう。
②タイミングを教える
ここでのタイミングとは、相手の心境を表情や態度、雰囲気から察して、行動に移すか否かを判断することです。
相手のタイミングを図れずに自己中心的に行動してしまえば、相手に不快感を与えます。
東京人材はこの相手の心境を判断する非認知能力が劣っている傾向にあります。
非認知能力は数値化できません。
つまり、明確な正解はありません。
コミュニケーションはケースバイケースであり、経験を重ねるしかありません。
そこで重要になるのが指導者の観察力です。
新人の人との関わり方に目を光らせ、評価する必要があります。
そこを浮かび上がった問題点を分析してサンドイッチ方式でストレスを与えないように伝えてあげましょう。
③恐怖は与えずに論理的に説明する
新人に恐怖を与えて強制的に行動させる指導には先がありません。
恐怖を感じて行動しても、指導者がいないときには効力がなくなるからです。
育成で重要なのは、指導者がいなくても自ら考えて行動できるようにすることです。東京人材は感情で訴えるよりも、論理的に説明しましょう。
感情で熱く語っても、根拠がなければ「興味ない」と分類されてしまいます。
この3つの視点を持つことで東京人材の将来像を把握できます。
厚生労働省が発表している「新規学卒就職者の離職状況」では、大卒で約30%が早期退職をしています。
業種別ではサービス業の離職率が40%以上と上位です。つまり、コミュニケーションを必要とする業種は多くの新人にとって無理があるということです。
特に東京人材には向いていない職業と言えます。
この現状を踏まえ、「辞めさせない」という目標よりも、いつ辞めても社会で通用する人材にするという考えにシフトする方が賢明です。
そこで優先すべきことはビジネスマナーです。
例えば、電話応対や名刺交換の仕方、メールや提案書などの文章構成です。
新人が他の職場に勤務した時に恥ずかしい思いをさせないことも指導者の役割です。
東京人材は起業に向いています。
「切り替えが速い」「感情的にならない」という冷静さが起業する上で強みになります。実際に「起業無関心者の起業に対するイメージ」の調査でも、最多の意見が「リスクが高い」です。
その点、冷静で無駄な感情のない東京人材は、「起業しないほうがリスクではないか」と考えます。
また、起業により自ら采配を振るようになっても、人間関係などの雑音に悩まされづらい強さも持っています。
つまり、東京人材の「度胸」が起業に最も向いています。
東京人材に昔の考え方は通じません。
昔と比べ、現代では情報の取得速度も圧倒的に速いです。
また、その情報は正確です。
それだけ自力でやれる幅が広がっています。そこで「石の上にも三年」、「果報は寝て待て」など、時間が解決するようなことわざは通じません。
たとえ新人でも仕事における能力が高ければその能力を最大限発揮させましょう。
新人という括りが優秀な東京人材の能力に蓋をしてしまいます。
ひとりひとりと向き合い、能力を評価しましょう。
東京人材は優秀であり、育成するにはそれなりのスピード感が重要です。
指導者は仕事を任せる度胸が試されます。
強みを伸ばす育成を優先し、苦手なコミュニケーションなどの非認知能力を無理に引き上げる必要はありません。
非認知能力の向上に関する育成方法は確立されていません。
それだけ非認知能力は曖昧で向上させるのは難しいということです。
そんな曖昧な部分で足踏みするよりも、強みを伸ばして弱みをカバーさせる方針へ切り替えましょう。