動画配信サービスの成功で、世界的な大企業に成長したネットフリックスが、どのような企業文化を作り上げてきたのか?
その謎に迫ったのが『NO RULES世界一「自由」な会社、NETFLIX』です。
本記事では、この本に書かれた会社成長のための3ステップについて、解説していきます。
本記事を読むことで、新しい時代の中で会社を成長させるヒントを得られるでしょう。
まずは『NO RULES』に描かれた、ネットフリックスという会社や、本の著者について説明します。
ネットフリックスは動画配信サービス事業で急成長した、世界的に有名な大企業です。2020年末で世界190カ国に2億人以上の会員を抱えています。
2020年の売上高は、約2.6兆円(250億ドル)に達しました。
既存のコンテンツだけではなく、独占配信や自社のオリジナルの作品を配信し、さらに会員数を伸ばしています。
『NO RULES』はネットフリックスの共同創業者で会長兼CEOのリード・ヘイスティングスと、企業文化の研究で名高い経営学者エリン・メイヤーの共著書です。
ネットフリックスのCEO自らが「ネットフリックスの経営方針や企業文化」について明かした本ということで、日本でも話題になりました。
小さなベンチャー起業に過ぎなかったネットフリックスが「なぜ、今のような成長を遂げたのか?」その秘密は、ネットフリックスの企業文化にありました。
ネットフリックスが最も大切にしている企業文化。
それが、「自由」と「責任」です。
この企業文化について、詳しく説明していきましょう。
ネットフリックスには、ほとんどの会社にあるルールが存在しません。
これが、『NO RULES』という本の題名の由来にもなっています。
例えば、ネットフレックスで有名なのが「有給がいつでも、好きな時に取れる」という制度です。ネットフリックスの社員は自分で、どれくらい働くかを自分で決められます。
また、ネットフリックスには「出張旅費と経費の承認は不要」とされています。社員が自分の判断1つで経費を申請できるのです。
しかし、経営者側から見ると「社員が好き放題に休んだら、会社が回らないのではないか?」「経費が悪用されて、会社の不利益にならないか?」と心配になることでしょう。
それを防ぐのが、ネットフリックスのもう一つの企業文化である「責任」です。
ネットフリックスは社員に大きな「自由」を与える同時に、社員に対して大きな「責任」を課しています。
例えば、出張旅費や経費の申請について、不正が発覚した場合、即解雇という厳しい対応を行います。
さらに、解雇の理由を詳細に書いたメールが全社員に配信されるのです。
「自由」と「責任」という企業文化。それを実行するために不可欠なのが、会社の成長のための3つのステップです。
『NO RULES』で下記の3つのステップをそれぞれ高めていくにともなって、会社が成長していくと語られています。
では、この3つのステップについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
最初のステップは、「優秀な人材を集める」ことです。
“最高の人材に、最高の報酬を払う”
これが、ネットフリックスの経営方針(モットー)です。
逆に、期待された成果を挙げられないような社員には、退職を促します。
優秀な人材を新たに集めるために、速やかにポストを空けてもらうのです。
企業経営上、「優秀な人材を集めることは当たり前では?」と思われたかもしれません。
しかし、ネットフリックスの「優秀な人材を集める方法」は他の企業とは比べものならないほど、徹底しています。
ネットフリックスでは自分の市場における価値で、給料が決まります。
年齢や入社年数、上司の評価だけで決まることはありません。
ネットフリックスでは社員に転職活動を勧めています。つまり、同じ業界の他の会社からの引き抜きの条件を確認したり、面接に行くことで自分の市場価値を確認して下さい、という方針です。
会社内だけの評価で給料が決まる場合、上司の好き嫌いに左右されてしまうこともままあります。その場合、特に若い従業員は不満を持って、転職してしまうことも多いでしょう。
会社ではなく、その業界全体の市場価値によって給料が決まれば、不公平感がありません。
もちろん、ネットフリックスでは市場価値よりも高い「最高の報酬」を社員に支払っています。
ネットフリックスの有名な制度に「キーパー・テスト」というものがあります。
“チームのメンバーが明日退社すると言ってきたら、
あなたは慰留するだろうか。
それとも少しほっとした気分で退社を受け入れるだろうか。
後者ならば、いますぐ退職金を与え、
本気で慰留するようなスタープレーヤーを探そう。”
つまり、ネットフリックスの社員たちは自分が会社やチームのメンバーにとって、慰留するほど不可欠な存在なのか?常に試されているのです。
そして、慰留するに当たらないと判断されれば、辞めてもらうという方針を取っています。
この方法をネットフリックスが取り入れたのは、インターネットバブルの崩壊のあおりを受けて、全社員の3分の1をリストラしなければならない、という状況になったことがきっかけでした。
経営側はリストラによって、職場の雰囲気が悪くなることを心配していました。
しかし、結果は全くの逆。職場の雰囲気はむしろリストラ前より改善したのです。
それをきっかけに、ネットフリックスは優秀な人材を集めること、そうでない人材には退職してもらうことに経営方針を変えました。
この方針が、常に最高の人材を集めることを可能にしているのです。
2つ目のステップは、社員同士が「率直なコミュニケーションをする」ということです。
社内で積極的にコミュニケーションをとり、フィードバックすることが推奨されています。
これは組織の風通しを良くするという意味で、よく言われる経営手法だと思います。しかし、やはりネットフリックスの「率直な」コミュニケーションは、徹底したものです。
例えば、ここで言うフィードバックは、職位に関わらず行われます。
上司が部下に対してフィードバックするだけではなく、部下が上司に対してフィードバックすることも、ネットフリックスでは日常茶飯事なのです。
ただし、お互いにフィードバックしようというだけでは、単なる批判や叱責になりかねません。
ネットフリックスではフィードバックを社員が上手にできるように「フィードバックの4原則」というガイドラインを設定しています。
“・相手を助けようという気持ちで(AIM TO ASSIST)
・行動変化を促す(ACTIONABLE)
・感謝する(APPRECIATE)
・取捨選択(ACCEPT OR DISCARD)“
つまり、フィードバックする側は「相手を助ける気持ちで行うこと」「行動を促す」ようなフィードバックでなければならない。
反対に、フィードバックを受ける側はフィードバックを与えてくれた人に「感謝すること」を忘れず、その上で「受け入れるかどうか」を自分で判断する、ということです。
例えば、ある社員は自分よりはるかに職位が上の上司に対して、会議中の適切ではない行動について、メールを送りました。
メールを受け取った上司は、そのメールを送ってくれたことに感謝し、何度もそのメールを見返すとのことです。
優秀な社員たちが互いに活発にフィードバックをすることで、上司の管理も不要になります。その分、さらに社員たちに自由を与えられるようになるのです。
3つ目のステップは「コントロールを減らす」ということです。
会社の社内規定や承認プロセスを廃止することが、ここで言う「コントロール」に該当します。
『NO RULES』では、管理職と社員に対して、下記のような原則や指針を教えています。
“管理職には「コントロールではなくコンテキストによるリーダーシップ」という原則を教え、社員には「上司を喜ばせようとするな」といった指針を与える。”
ネットフリックスでは重要でリスクが大きい意思決定は、職位に関係なく分散させています。管理職の役割は意思決定をすることや、社員へ指示することではありません。
社員の意思決定をサポートするということです。
例えば、ネットフリックスでは1億ドルの大型契約でさえ、CEOに知らせることなく、社員の責任で進めてしまうとのことです。
一方で、社員には「上司を喜ばせようとしないこと」「自由に挑戦することがいいこと」を教えています。
「社員の評価は一度の挑戦の結果で出るわけではない、全体のパフォーマンスで判断される」という文化も浸透しています。
この教えによって、社員は失敗を恐れず、チャレンジできる環境に置かれます。
自分の能力を十分に発揮して、最高のパフォーマンスを発揮できるのです。
コントロールを減らすことで、優秀な社員が自由な発想で、かつスピード感を持って仕事に取り組めるようになる。
それが、会社全体の業績を押し上げることにつながることが説明されています。
この記事では、『NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX』に書かれた、会社成長のための3ステップについてお伝えしました。
「ネットフリックスの「自由」と「責任」の企業文化は革新的すぎる」
そう思ったかもしれません。正直、日本の企業が「ネットフリックス流」をそのまま真似することは難しいでしょう。
しかし、ネットフリックスが今のこの時代に成長を遂げていることは事実です。
この本から、経営者の方は何かしらの経営のヒントが得られるのではないでしょうか。
ネットフリックスという企業について、さらに詳しく知りたい場合は、ぜひこの本を読んで頂くことをおすすめします。
出典:リード・ヘイスティングス (著), エリン・メイヤー (著), 土方 奈美 (訳)(2020)
『NO RULES(ノー・ルールズ) 世界一「自由」な会社、NETFLIX』日本経済新聞出版