少子高齢化によって人口減少が加速していく日本の中で、地方の企業の人材不足は非常に深刻な状態になっています。
求人を出したとしても応募してくる人は少なく、欲しい人材を確保することができないという地方企業も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、地方企業の現在の採用に関する状況や、首都圏の人材をどのように採用するのかについて詳しく解説していきます。
人材不足が叫ばれている地方企業ですが、実際に地方の実態はどのようなものなのでしょうか。
地方に在住しているほとんどの若者は、大学などをきっかけに首都圏へと進学することが多いです。
主な大学が首都圏に集中しているため、大学進学とともに首都圏へと移動しそのまま就職するというのが、ほとんどの若者が通る道になります。
実際にリクルートワークスが発表した研究データによると、大学進学で若者人口の28.9%が首都圏へと移動し、さらに就職によって41.6%の若者が首都圏へと集中。
中部東海や京阪神でさえも15%に及ばない状態となっており、他の地方に至っては約3%前後しか若者がいないのが現状となっています。
大学等進学による若者人口の割合 | 就職者数の若者人口の割合 | |
北海道 | 18,577人 3.2% | 12,015人 2.9% |
北関東 | 30,829人 5.3% | 12,009人 2.9% |
首都圏 | 167,222人 28.9% | 172,584人 41.6% |
北陸甲信越 | 37,189人 6.4% | 15,671人 3.8% |
中部東海 | 72,889人 12.6% | 41,697人 10.1% |
近畿 | 18,113人 3.1% | 9,140人 2.2% |
中国 | 32,812人5.6% | 6,592人 1.6% |
四国 | 16,744人 2.8% | 13,938人 3.7% |
九州 | 60,396人 10.4% | 32,208人 7.8% |
京阪神 | 87,948人 15.2% | 75,660人 18.3% |
東北 | 36,325人 6.2% | 17,340人 4.2% |
大学進学及び就職によって若者人口がほとんど首都圏に移動してしまうため、地方企業としても慢性的に人材不足に悩んでいます。
企業によっては、採用活動を行ったとしても人が集まらないことがほとんどなので、初めから採用目標を減らしてしまうところも増えており、地方全体に諦めの色も広がっているのが現状です。
ここまで紹介したように大学進学と就職活動を通して、若者の人口の約5割が東京を中心とする首都圏へと移動してしまいます。
そのため新しく人材を確保しようと動いたとしても、そもそも地方に人が残っておらず、採用することができないというのが、多くの地方企業の現状でしょう。
こういった現状を食い止めるためにも、首都圏や県外の人材を採用することは、地方企業にとって急務になります。
そこでまずは、地方企業における採用の課題とそれを解決するための糸口について、以下で詳しく見ていきましょう。
上記でも紹介したように地方では人材不足が著しいため、地方企業でも採用活動に消極的になっているところが多いです。
リクルートワークス研究所の発表したデータによると、採用目標を減らしているという企業が約6割近くまで増えており、採用活動をする前から諦めているところが多いといえます。
人材を確保したいと思っていたとしても、採用活動を積極的に行っていなければ、欲する人材を迎えることはできません。
首都圏の大企業によっては、翌年の採用活動だけではなく2年後までも見据えて行なっているところもあります。
時間をかけて採用活動を行えば結果を出せるというわけではありませんが、そもそも採用活動を積極的に行わなければ、人を集めることはできないでしょう。
知らず知らずのうちに、人が集まらないからといって採用目標を減らしている地方企業は、まずは高い目標を持って採用活動を行う必要があります。
地方企業では、多くの人の中から選んで採用するといった余裕はありません。
採用活動の初めから、どういった人材が欲しいのかということを明確にして、適切な人に対してアプローチをする必要があります。
そのためにはまず自社の課題を明確化して、どういった人材にターゲットを絞るのかということを決める必要があるでしょう。
必要な人材がどういった人なのかということをしっかりと明確化することによって、最低限の労力で効率の良い採用活動をすることが可能です。
現在では、求職者からだけではなく企業からもスカウトといった形で採用活動ができるサービスが多々存在します。
そういったサービスを活用することで、欲しい人材に絞ってアプローチを行い、採用活動を効率化しましょう。
首都圏に人材が集中しているにも関わらず、地方へ戻りたいと考えている地方出身者は45.1%存在するというデータが、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調べによって出ています。
こういった地方出身者は、仕事情報が不足していることや学生生活で慣れ親しんだ首都圏から移り住むことへの心配があることによって、最終的に首都圏で就職しているのです。
そこで地方企業としてやれることは、地方出身で地元に戻りたがっている人々に対して、地方で働くことの情報を共有しサポートを積極的に行うことになるでしょう。
「地方で働くことでどういったメリットがあるのか・首都圏や県外から移り住むことにサポートがあるのか」といったことを採用活動で説明することができれば、地方出身の人を呼び寄せることができるかもしれません。
そのためにはまず採用活動にあたって、インターネット上での説明会や面接を充実させ、就職活動における負担をできるだけ減らすことが重要になります。
地方に関する情報を得ようとしても、実際に説明会などで現地に赴かなければならないことを強いてしまえば、求職者に著しい負担としてのしかかってしまうでしょう。
実際に就職するとなった場合は、一度は現地に足を運ぶ必要があるとは思いますが、それ以外ではできるだけ首都圏で採用活動を終えることができるようにすることも大事です。
実際に首都圏から優秀な人材を採用することに成功した、地方企業の具体例について以下でいくつか見ていきましょう。
北海道で宿泊施設を有しているある企業は、求人に情報を多く掲載することで人材集めに成功しました。
採用に成功するまでは、やみくもに求人サイトに広告を出したり、派遣などで人員をまかなっていましたが、人の移り変わりが激しく手間や費用がかかってしまうため、どうしても人材を首都圏などから呼び寄せることが必要でした。
そこで求人の際に、求職者目線からどういった情報が欲しいのかということを徹底的に分析し求人を打ち出すことで、 多くの人材を採用することに成功したのです。
実際に求人情報に盛り込んだ情報としては、以下のようなものになります。
特に1月の具体的な生活費なども求人情報に盛り込む事によって、奨学金などを返済する必要がある学生が、実際の就職後の生活を想像しやすくすることができ、多くの人が応募することに繋がりました。
実際に働く上での経済状況やどういったところに住んで生活するのかということを、あらかじめ求人情報で明確化することによって、まずは申し込んでみようという気持ちになったのが人材を採用することができた成功要素の1つといえるでしょう。
中部地方のある企業では、後継者を探すために優秀な人材を首都圏など全国から呼び寄せる必要がありました。
そこでまずその企業が行ったことは、東京でしっかりと欲しい人材を見極めるために面接を行い、できるだけ優秀な求職者が訪れるようにしたのです。
東京で面接を行うだけであれば他の企業と同じですが、それに加えて企業の本拠地である地元地域でバスツアーを行うことで、地方へと移住することの不安をなくそうと試みました。
地方出身者であっても、地方に戻って働くということには一定の不安があるということは、少し上記でも紹介しました。
地方の労働環境や生活レベルがどういったものなのか、実際に就職して働くにあたっては、どういったところで生活することになるのか想像することができないのが、地方へ移り住むことの最初に立ちはだかる難点です。
そこで求職者に対しバスツアーを行うことによって、地方での住みやすさや働く環境を実感してもらうことはもちろんのこと、車内で社員と交流することによって、年収や物価に関する率直な意見を聞くことができます。
フランクな状態で地方での生活のイメージを想像することができるので、不安という大きな障害を取り除くことが可能です。
東京で面接を行うことで求職者の負担を減らし、地方へ移り住むことへの不安をなくすことで、優秀な人材を首都圏だけではなく全国各地から集めることができたという良い例になります。
地方企業が首都圏の人材を採用するにあたっての課題や、実際に採用活動に成功した企業の具体例について紹介してきました。
確かに進学や就職によって、若者のほとんどが地方から離れて首都圏へと移ってしまいます。
しかし一方で、地方出身で地元へと戻りたいと考えている人も5割近くいることから考えると、採用活動を工夫することによって、首都圏から人材を呼び寄せることも不可能ではないでしょう。
首都圏から優秀な人材を集めるにあたって、採用活動で重要な点は以下の要素が挙げられます。
以前はわざわざ東京に赴かなければ、求職者と会うこともできませんでした。
しかし今ではインターネットを通じて、どこにいても求職者とコミュニケーションをとることができます。
そのため様々なツールを効果的に活用して、求職者に対して適切なアプローチをすることができれば、地方企業であっても優秀な人材を首都圏から確保することが可能です。
今回の記事を読んで地方企業が採用活動を成功させ、より良い繁栄を築くことを願っています。