部下(子供)あるいは上司(父親)とうまくいかない・・・これはファミリービジネスでもっとも多いと悩みと言っても過言ではありません。
なぜこんなにも多いのでしょうか、そして実際に何が原因となってこの問題は起こっているのでしょうか?
この記事ではファミリービジネスを成功させるために、仕事とプライベートでの親子の理想的な接し方についてご紹介していきます。
ファミリービジネスにおいて親と子の間には2つの関係があります。上司と部下の関係、親子の関係です。
この2つの関係がとても複雑で、しばしば問題になります。
普通ファミリービジネスの会社内で、父親の子供に対する接し方は2つに分かれます。
「家族だから甘やかしてしまう」「家族だから他の従業員以上に厳しくしてしまう」の2つです。
これはどちらもよくありません。
経営面でも、他の従業員にとっても、家族としてもです。
前者は子供が次期経営者として立派に育ちにくくなり、また他の従業員からの印象も悪くなります。
後者は子供のモチベーションが大きく下がることが多く、最悪会社を辞めると言い出すこともあります。
もちろん最低限の叱咤や注意などは必要ですが、子供にとっては、人前で父親に侮辱されること以上の屈辱はありません。
このため、会社では特に子供との接し方に気をつかう必要があるのです。
ファミリービジネスで多いのは、父親が経営者として経営に多くの時間を割かなければならないため、子供は主に妻に育てられるということです。
父親は子供と接する時間が少なくなり、親子間の関係構築がうまくいかないため、子供が大きくなって同族経営をするときに喧嘩が多くなってしまいます。
数代続いている会社の場合は、子供が小さいうちから、子供を将来後継者として育てることを決めている場合もあります。
その場合、無意識のうちに後継者=仕事に関係ある存在として、見てしまうことがあります。
そうなると、育て方も無意識のうちに子供ではなく後継者という視点で見てしまうため、知らず識らずのうちに愛情が欠如してしまいます。
また、会社の規模などにもよりますが、父親は会社では社長というもっとも権威のある場所に位置しているため、それがプライベートでも発揮されてしまい、家庭内でもまるで妻と子供が部下のような位置付けになってしまうことも少なくありません。
このような事実から、子供や妻といい関係を築けずに、ファミリービジネスがうまくいかないケースも多いのです。
仕事場で公私混同してしまうというのも、よくある話です。
家で呼ぶような呼び方で呼んでしまう、ということはよくありますが、これは従業員に悪い印象を与えることがあります。
仮に区別できていたとしても、仕事場で雑談をするときなどはどの呼び方にすればいいのか、切り替えが難しいシチュエーションもあります。
また公私混同で多いのは、家庭内のことを会社に持ち込んでしまうということです。家庭でしているような喧嘩を会社で始めてしまうと、家族でもない従業員は仲裁に入りづらいですし、「家でやって欲しい」と思われるでしょう。
これをやると現社長のイメージが悪くなってしまうばかりではなく、次期後継者の信用をも落とすことになり、従業員の不安を煽ってしまうことにもなります。
そして、仕事場で親子関係を悪くしてしまうと、プライベートでも悪いままになるため、どちらの場所でも悪影響になります。
逆もまた然りです。ただし、家でも顔を合わせるために、関係が修復しやすいということもあります。
まだ後継者が未熟だという理由で、会社の資金的問題、取引先や仕事の受注問題、将来の会社の先行きなど、家族が会社を手伝ってくれているとしても、1人で全ての問題を引き受けているような気持ちでいる人も多いでしょう。
そんなときは、家族に話を聞いてもらいたい、何かしらの意見やアドバイスが欲しい、つまり一緒に悩んで欲しいと思うこともあるでしょう。
経営的な悩みは後継者がある程度育たないうちは相談できない(相談できても自分の望む答えが返ってこない)ものです。
そのことで1人で悩んでいると、ファミリービジネスのパートナーとしての関係を築けないどころか、家庭内でも内向的になり、家族との会話も次第に減っていき「寡黙な父親」状態になってしまいます。
せめて家庭内だけでもいい父親でいたいものですが、そうならなければという気持ちがさらにストレスを感じさせてしまいます。こうなってしまっては、経営者としても父親としてもうまくいきません。
後継者や子供の立場から見れば、会社では上司とはいえ父親ですので、助けたいという気持ちがあります。
ですが、父親が自分の意見を受け入れないことを知っているので助けられない、または父親が心を開かないので何を悩んでいるのかわからず、実質的に助けられないでいる、というようなことが起こります。
以上のように、ファミリービジネスがうまくいかないと言う話はよく聞く話ですが、実は日本では、昔から長く経営が続いている企業の90%がファミリービジネス、また上場企業の過半数がファミリービジネスという事実があります。
日本だけではなく、海外でも大企業はファミリービジネスであることが多く、ウォルマートやフォルクスワーゲン、フォードといった企業もそうです。
では、ファミリービジネスであればなんでも成功するのか、というとそうではありません。
他人よりも深い絆で結ばれている家族が良好な関係を築けているときに、初めてうまくいくと言えるのです。
他人同士で上司部下の関係だと、あと一歩が踏み込めないということがよくあります。
そのために部下は十分な意見を言うことができず、結果的に上司の考えに従わざるをえなくなってしまうのです。
一方、ファミリービジネスの場合は上司と部下である前に親子ですので、普通なら言いにくいこともズバズバ言えてしまいます。
これがファミリービジネスの強みになっているのです。
しかし、子供とこういった関係を構築できない父親が存在するのも事実です。
子供が自分の意見を言うことができず、ただ親に従うのみになってしまうと、ファミリービジネスの強みを活かせませんし、子供が家業を継いだ時にリーダーシップを発揮できずに事業がうまくいかなくなることも考えられます。
ファミリービジネスで会社を繁栄させていくには、子供との関係がとても重要です。そのためには、以下の3つの点に留意しておく必要があります。
1.会社とプライベートをできる限り明確に区別すること
2.子供が意見を言えるような関係を構築すること
3.子供の意見を聞こうとする意志を持つこと
経営者は会社では(少なくとも従業員の前では)できる限り、後継者を他の従業員と同等に扱う必要があります。
会社と家庭内で、父親の経営者としての顔、親としての顔をきっちり使い分ける必要があるということです。
これは難しいことですが、せめて7割か8割はできるように努めましょう。
自分ができても子供が公私混同してしまうこともありますので、それはよく言い聞かせて、納得させることが必要になります。
ですがこれだけでは他の従業員と変わらなくなってしまうため、子供が意見を言いやすくなるような関係、あるいは場面を用意してあげることです。
頑固な人は特に、子供の意見も聞いてみる姿勢を持つ必要があります。
同じ業種でも時代によってやり方を変えなければ生き残れません。
若い後継者は常に新しいことを取り入れようとしますが、現社長がそれを認めないということはよくあります。
ですが例えば、現代でもテレビを見る人が減って、SNSや動画サイトなどのインターネットへ時間を使うようになっています。
時代に合わせて戦う舞台や方法を変えていかなければ、事業を続けていくことが難しくなります。
後継者の意見を聞いて取り入れることも、ときには会社の発展のために必要なことなのです。
自分から子供に意見を求めるのもいいでしょう。
これにより子供は、「自分は父親に認められている」という実感を持つことができます。
そして徐々に次期経営者としての自覚も強くなっていくでしょう。
ファミリービジネスにおいて父親は、会社でだけではなく家庭でも永続的に良好な関係を築けるように努めなければなりません。
家族で経営している限りは、子供がその会社で働こうが、働くまいが家族の関係を切ることはできません。
子供がその会社で働くのが嫌になり、辞めて他の会社に就職することになっても親子の関係は続いていきます。
親としては、一人っ子の場合は後継者がいなくなることが悩みのタネになりますし、子供としても、親を裏切ったような気持ちになり後ろめたさも感じてしまいます。
家庭でも、気まずさから関係が悪化してしまうかもしれません。
それを避けるためにも、子供がファミリービジネスで不快感を感じないように、経営者としても親としてもしっかりマネジメントしていくことが重要なのです。