老舗企業と時代の変化

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創業から1500年の歴史を誇る、世界最古の企業としてギネス記録を持つ「金剛組」を初め、創業200年以上の企業を世界一抱える老舗大国である日本。

創業から最も歴史が長い店舗を持つ企業ランキングは5位までを日本の企業が独占しており、世界で創業200年を超える企業の半分は日本に存在すると言う異例の数を誇っています。

そこで当記事では日本に老舗企業が多い理由や、老舗企業に学ぶ時代の変化の乗り越え方について内容をまとめていきます。
5分程度で読める内容なので共通する変化する時代への対応や乗り越え方について、興味をお持ちの方は是非参考にしてみてください。

世界的に見ても貴重な日本の老舗事情

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日本では創業200年を超える企業の数は2位の米国の239社に対し、1,340社と6倍以上の差を誇る老舗を抱えています。
100年を超える企業が多い理由は、近代成長が始まった明治時代初期まで一般的だった「家督制度」。
「家督制度」とは、家督が基本長男・長女として生まれた子供に家の地位と財産を継がせる制度です。

現代でも法律上の効力はないとはいえ名残が残っている家系も多く、イメージしやすい方も多いのではないでしょうか。
海外では家督制度が設けられていたのは貴族くらいで、一般市民には家督制度のような制度が無い国が大半。
「家督制度」が廃止されたのは1943年と、日本の歴史的に捉えると100年にも満たない年月しか経っていません。
そのため家督制度により代々から伝わっている店を継承することにより、現代まで残る老舗が世界的に見ると数多い理由となっています。

更に日本では「家督制度」だけではなく、海に囲まれた島国という立地上から侵略者が入り難く世界的に見ても平和な年月が続いた国です。
他国の侵略の危機に晒され続け、財産の奪い合いを繰り返していた大陸の諸国とは事情が違います。 
そのため安定して商売を続ける事ができたのも、老舗企業が多い理由の一つです。

老舗企業が抱える時代の変化による共通の課題

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家督制度の廃止以前は、自然災害以外に企業運営に関わる驚異的な変化が存在しなかったのも日本に老舗企業が多い要因の一つでした。
ですが現代から数百年もの間に「産業革命」「第二次世界大戦」「バブル崩壊」と、老舗企業は長年の運営を脅かす数々の困難に直面しています。
「家督制度」の廃止以降で現代まで残り続けた老舗企業も、決して老舗企業の運営が以前のように順調という訳ではないのが現状です。

そんな数百年以上の歴史を持つ老舗企業を脅かす、共通する危機や今後の懸念点の一例を紹介していきましょう。

顧客層の高齢化

何処の老舗企業にも共通点として抱えているのが、購買を行う顧客層の高齢化が挙げられます。
理由としては老舗企業の大半は古くから伝わる伝統文化と座敷の高さから、若年層が気軽に利用できる場所ではない事が多いため。

老舗企業の一例を挙げると「宮大工」「着物店」「和菓子店」「旅館業」など、座敷が高いイメージが先立つ商品を取り扱う企業ばかりです。
バブル崩壊により消費も落ち込み、現在の消費者も長年の付き合いにより得意先となった富裕層の高齢者を占めている事が大半。
未来を見据えて数十年後にも企業を存続していくためには、必然的に新規顧客の開拓を必然として狭まれています。

更に少子高齢化により人口減少の著しい日本において、マーケットが縮小している日本での若年層へのアプローチも難しく一筋縄ではいかない現場も懸念点となっています。

時代の変化によるイノベーション

産業革命以降の科学やテクノロジーによる急速な近代化も、老舗企業の存続を脅かす大きな要因の一つとなっています。
一例を挙げると世界一の歴史の長さを持つ金剛組は、鉄を使用せずに木材のみで建造物を構築する宮大工の技術が自慢の企業です。
ですが科学技術やテクノロジーの発達により、主な取引先となる神社仏閣も耐久性が高く価格も安い鉄筋コンクリートを採用し始めました。
結果として高額で定期的なメンテナンスが必要な宮大工技術の需要が薄くなり、経営危機に直面しているのが現状となっています。

また産業革命以降の製造業の発達により、良質で安価な商品を大量に作成可能となりました。
そのため老舗企業が作成する伝統工芸品の数々も、存続の危機に瀕しているのも問題の一つとなっています。

新型コロナウィルスの影響

記憶に新しいのが2020年春に見舞われた、新型コロナウィルスによる経済影響。

長年の運営期間を誇る老舗企業の数々も例外ではなく、残念ながら2019年時点でも過去最多を記録しており今後はさらなる増加が見込まれます。
特に影響の大きかった観光業となる旅館関係は、繁忙期での外出自粛要請にて致命的な経済ダメージが発生しました。
現段階では正確な数値が出ていませんが、今後はワクチンが開発されるまで影響が出続ける事も老舗企業が直面している存続の危機でしょう。

老舗企業が挑む時代の変化への挑戦

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現在でも尚、例外なく時代の波に巻き込まれている老舗企業も長年の歴史に幕を下ろすまいと様々な取り組みを行っています。
そんな老舗企業が時代の変化へ挑戦に挑む、打開策の一例を紹介していきましょう。

新商品の開発

伝統が受け継がれてきた看板商品だけでは、消費者も高齢者が中心となり手作り生産の商品に危機感を覚える企業も数多いのが実情です。
そこで新たな顧客を獲得するための新商品の開発も、時代の変化へ挑戦する取り組みの一つ。

老舗和菓子業界の一例を挙げると、見た目の美しさへの特化や現代風のお菓子へアレンジするなどの挑戦が行われています。
また後継者不足へ対応すべく、人の手で生産せずに済む生産機器の導入なども大きな挑戦の一つ。

時代の変化に合わせるべく自社の強みを活かした新商品への挑戦も、老舗企業に課された課題でしょう。

海外進出

人口減少により縮小していく日本のマーケットで残り続ける為に、新たな老舗企業の挑戦として挙げられるのが海外進出です。

海外では日本のように伝統技術を繋いできた老舗企業が少ないのも優位な点に加えて、日本産は品質も高く良心的な値段から高い人気を誇っています。
一例を挙げると京都の老舗着物店「片山文三郎商店」では、伝統技受話「絞り染め」をバックやスカーフなどアパレル商品へ応用。

更にアパレル店へのプレゼンテーションを行い、海外セレクトショップへの自社商品の取り扱いを成功させている老舗企業です。
消費の縮小した日本から海外へのマーケットへ目を向けるのも、老舗企業が挑む時代の変化への挑戦の一つでしょう。

参照:https://www.wwdjapan.com/articles/1059062

クラウドファンディング

老舗企業が行っている挑戦の一例の一つが、歴史の存続をかけてインターネットを用いて一般人から事業資金を調達する「クラウドファウンディング」です。
事業者は支援で得た事業資金により製品やサービスなど生み出す事が可能で、支援者は事前に事業者が用意したリターンを受け取る事ができる仕組み。

この「クラウドファンディング」を利用して、老舗企業の存続を掛けて挑戦に挑む企業の一例が老舗和菓子店「ワタトー」です。
「ワタトー」では消費者の高齢化と職人の後継者不足に懸念を抱き、新商品の開発と製造機器を開発。

更にラッピングの開発と認知拡大に使用する宣伝費を募るクラウドファンディングに挑戦しています。
「ワタトー」のようにITテクノロジーの恩恵を受けて生まれた、新たな仕組みへの挑戦も老舗企業が存続するために必要な課題でしょう。

参照: https://www.huffingtonpost.jp/entry/kinakowomachikojokarasekaini-shinisekinakokashitennoaratanachosen_jp_5d2e7829e4b0a873f64367e0

コラボレーション・販売先の拡大

新型コロナウィルスによる影響の対策として老舗駅弁業社が取り組んだ対策の一つが、駅以外での販売先の拡大。
一例を挙げると2020年は外出自粛要請により、長距離を移動する駅や空港などの利用者も半分近くまで落ち込みました。

そこで取り組みとして行われたのが、老舗駅弁会社が自社のブランドを生かしつつ、スーパーなどでお弁当を販売して売り場を開拓するなどの販売先の拡大。
また製造所近場での販売は空港や駅までと違い、物流コストを抑えることが可能なので懸念点である値段も抑えることができます。

更にスーパーとのコラボレーションを行うことで、自粛期間中で駅弁を手に取れなかったお客様にも身近な存在に。
創業数百年の間では異例となる試みも、老舗企業の存続へと踏み出す大きな挑戦の一歩でしょう。

時代の変化に挑む老舗企業から学びたい事

生涯雇用が一般的だった時代も終わりを迎えた、現代では会社の寿命は30年という噂も流れるほど、企業の存続が難しい時代です。
数百年の歴史を誇る老舗企業の存続を脅かす脅威の数々は、ここ数百年で起きた時代の変化によるもの。
そんな老舗企業でも歴史に胡座をかくのではなく、存続を続ける為に共通する大切なことは新たな挑戦です。

長期アニメ作品で例を挙げると、世代を超えて現代でも愛される子供向けアニメーションは、必ず時代に合わせた変化を取り入れています。
例えば「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」などは、積極的に時代の流れを取り入れアップデートを繰り返した結果、映画化が続くなど高い人気を誇っています。

一方時代の変化に合わせず時代感を守り続けた「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」などは、視聴率が下がり続けているのが実情です。
今後の時代の変化を乗り越え続ける為には、時代の変化に合わせて高い人気を集める「ドラえもん」のような老舗企業になる必要があるのかもしれません。

 

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