グローバル化に成功した老舗企業

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ビジネスにおける「グローバル化」とは

第二次世界大戦後,大きく発展してきた日本産業の特徴に,原材料を輸入し製品を輸出する「加工貿易」がありましたが,1980年代に顕在化した貿易摩擦を受け,日本企業は積極的に海外生産シフトを進めてきましたが,それでもなお2010年までは輸出が輸入を上回るいわゆる「貿易黒字」が続いていました。

しかし,「グローバル化」という言葉は必ずしも「モノ」の移動だけを指すわけではありません。インターネットの急速な普及により,これからはますます世界の政治・経済にまったく影響を受けずにビジネスを進めることが難しくなっていくと考えられます。

上昇する日本企業の「海外生産比率」「海外売上比率」

国際協力銀行が実施したアンケート「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」によれば,2018年度の「海外生産比率」は過去最高の36.8%,「海外売上比率」はここ数年横ばい傾向にあるが,38.8%と高い水準となっています。

文化的な違いもあるため,日本で成功していたビジネスモデルがそのまま通用しないことも多く,さらに2018年から続く米中貿易摩擦等の不安定な外的要因がある中でこうした状況になっている背景には,2011年より9年連続で減少している日本の総人口からも来る国内市場の縮小があると思います。

「老舗企業」とは

「老舗企業」と聞いたとき,創業何年以上の企業を思い浮かべるか人によって異なるかもしれませんが,企業調査を専門とする帝国データバンクのでは業歴100年以上の企業を「老舗企業」と定義しており,同社調べによれば,日本には33,259社の「老舗企業」が存在し,全体に占める割合は2.27%となっています。(2018年11月時点)

倒産した企業がおおよそ30年程度を経過していることから,一般的に企業の寿命は30年とも言われていることを考えると,業歴100年というのは老舗にふさわしい年数だと思います。

ちなみに,日本は世界の中でも特に老舗企業が多く,理由として地理的に島国であるために人やモノの移動が容易でなかったこと,歴史的にも他国との接触を避けてきた時期があったこと,等を考察されています。

成功事例①:武田薬品工業株式会社(創業:1781年)

1つ目の例は,あまり日頃はなじみのない分野かもしれませんが,日本の製薬メーカーで売上高1位である武田薬品工業株式会社です。同社の売上高をみますと,2015年度:18,074億円(海外売上割合:61.9%)に対し,2019年度:32,912億円(同:82.0%)と,全体の売上を伸ばしつつ,海外での売上も伸ばしています。

きっかけは2014年に海外製薬会社の社長が就任したことで,以後M&A等を中心に業績を拡大しており,中でも2019年1月に手続が完了したアイルランドの製薬大手シャイアー社の買収は,日本企業によるM&Aは最大となる約6兆8,000億円という金額で話題にもなりました。

企業買収を繰り返した結果,社員の約9割が外国人となっている現状が,日本の「老舗企業」と言えるのか,という意見もあるかもしれませんが,国際競争力を高める方法として,M&Aは有効な方法ですし,歴史や伝統だけを重んじていてはいけない,という見方もできると思います。

成功事例②:任天堂株式会社(創業:1889年)

2つ目の例は,最近ではあつ森(あつまれどうぶつの森)の販売が好調で話題となっている任天堂株式会社です。同社の売上高をみますと,2015年度:504,459百万円(海外売上割合:73.1%)に対し,2019年度:1,308,519百万円(同:77.0%)と,以前より高い海外売上比率を維持しつつ,全体の売上を大きく伸ばしており,中でも米国が最大の市場となっています。

代表的なコンテンツである「ポケモン」を中心に,同社の海外展開はここ最近のことではありませんが,会社の歴史を遡ると,花札の製造を生業としていたのは有名な話で,その頃から安価で高品質な製品を市場に共有する,という考え方は引き継がれているようです。

同社のゲーム機,中でも主力の「スイッチ」はほぼ全量を中国で製造しておりましたが,米中貿易摩擦の影響を受け,一部ベトナムへ移管する動きを進めてきました。とはいえ,部品の中には中国で製造されているものが多く,新型コロナウイルス感染拡大の影響で一時期は供給不足が懸念されていたほどです。

生産拠点をどこに置いていても,「モノ」の流れであるサプライチェーンの一か所でも止まってしまえば,製造には影響が出るもので,海外進出と直接的な関係はありませんが,ものづくりをするにあたっては,はじめに最適な拠点や販売チャンネルの構築はもちろんですが,BCP(事業継続計画)の観点から供給安定に向けて常に検討が必要であると言えます。

成功事例③:キッコーマン株式会社(創業:1917年)

3つ目の例は,調味料(しょうゆ等)の代表的なメーカーであるキッコーマン株式会社です。1974年度から2018年度までの海外におけるしょうゆ類販売量は右肩上がりで,45年間で24.7倍,年ごとの平均伸び率は7.6%と大きく成長してきました。2018年度の売上高:456,807百万円に占める海外売上比率も,59.8%を占めています。

しょうゆという和食に使われるイメージの強い調味料が,日本よりも海外で売れているということには驚きます。今でこそ「和食」は2013年12月にユネスコの世界無形文化遺産に登録されるほど世界で浸透しましたが,同社が海外展開を進め始めた1970年代には「和食」はまだまだ認知されていませんでした。ただ日本からのしょうゆ輸出の歴史は長く,江戸時代には長崎からオランダへ輸出がされていたそうです。その後も在留邦人向けを中心に輸出されていました。

同社がグローバル化に成功した背景には,単に商品を輸出するだけでなく,現地の人々が好む料理の開発を併せて進めていったことがあると思います。老舗企業だからといって伝統を振りかざすのではなく,異なる文化的背景を持つ国でビジネスを展開するためには,元々の商品を大事にしつつ謙虚に市場開発を続ける,という姿勢が必要なのだと感じます。

成功事例④:ライオン株式会社(創業:1891年)

4つ目の事例は,トイレタリー製品等日用品の大手メーカーであるライオン株式会社です。2018年度の売上高は3,494億円,うち海外売上は947.6億円で比率は27.1%と高くないですが,アジア各国での合弁事業を中心に,特にマレーシアでは、2003年から発売を開始した『TOP』が衣料用洗剤のNo.1ブランドとなっています。国内市場でも,人口は減少傾向でも世帯数が増加していることに着目し,高付加価値製品のプロモーションに注力をしています。

先ほどのしょうゆと同じく,生活に密着した品物ほど,現地で既に使われている商品があるもので,そこに割って入り,市場シェアを拡大していくのは難しいことです。地道なヒアリングや,現地の原料メーカー等との協力が不可欠であると思います。

まとめ

業種が医薬品,娯楽,食品,生活用品,とそれぞれ異なりますが,100年以上の歴史を持つ老舗企業の例を4つ挙げてきました。それぞれの企業に共通するのは,国内市場がうまくいっていないから海外に活路を見出すのではなく,国内と海外をうまく両立させて業績を拡大してきた点だと思います。

自社の強みを十分に分析したうえで,どのように海外市場でそれを活かしていくか,が重要なのです。

これからもグローバル化が進展する中,日本でも歴史の長い老舗企業が増えていくことは喜ばしいことですし,今回例に挙げたようにグローバル化に成功する企業が増えていくことを期待したいです。

 

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