新人の育て方(地元人材編)

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地方人材は協調的・保守的で対人関係を重視します。
なぜなら、地方人材は自身の将来像だけでなく、家族の将来も含めた人生設計をしているからです。

実際に、地元就職する学生へのアンケートでは「両親と近い場所(実家)に住みたい」、「ワークライフバランスを保ちたい」といった理由が上位に挙がっています。

このように、「住む場所」や「人」が最優先される傾向にあり、仕事の優先順位は低いということです。
つまり、仕事ではワークライフバランスを重視し、出世競争よりも対人関係を重視します。

今回は新人の中でも「地方人材」の特徴や育成のポイント、指導者が地方人材に対して持つべき視点について分析してきます。

 

認知能力と非認知能力


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 地方人材の特徴を分析する前に、認知能力と非認知能力を理解することが重要になります。

認知能力とは知能(IQ)などの数値化できる力、非認知能力とは他者と協同する力、情動を制御する力、コミュニケーション力などの数値化できない力を意味しています。
対人関係を重視する地方人材はこの非認知能力が備わっていると考えられます。

また、この言葉を有名にしたジェームズ・J・ヘックマン(2000年ノーベル経済学賞受賞、シカゴ大学経済学部特別教授)らの発表で、「非認知能力は認知能力の発達を促すが、その逆はない。」と結論付けています。

つまり、地方人材は知能(IQ)が高い可能性があるものの、対人関係を得意としているということです。

 

1.地方人材の特徴


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対人関係を得意とする地方人材の特徴を知ることで、伸ばすべきポイントや注意すべきポイントが明確になります。

 

1-1 保守的


地方人材の多くは保守的であり、周囲との協調を好みます。
もちろん仕事においても他者との衝突を避ける傾向にあります。つまり、平和主義者です。

他者と協調できるので、チームアプローチで力を発揮します。
するべきことが明確な場合、精力的に取り組むことが可能です。
しかし、臆病で用心深い一面もあり、「会議で発言できない」「自分で目標設置できない」「何かを生み出すのは苦手」といったデメリットもあります。

1-2 変化よりも安定を好む


変化を極端に嫌い、新しいことは避ける傾向にあります。
冒頭のアンケートの理由以外にも「地元の風土が好き」といった回答があります。つまり、変化の少ない地元の風土を好みます。

地方は中小企業が多く街並みも変わらず、東京のような大きな変化はほとんどありません。
地方は変化を嫌う人材にうってつけの場所です。これらは真面目な性格が故の特徴です。

仕事においての「真面目」は重要な要素ですが、頑固、融通が利かないと感じることもあります。

1-3 ワークライフバランスが主体


近年、ワークライフバランスは残業時間の規制が始まったのを理由に注目されています。
仕事だけではなく、プライベートにも重点を置くといった考え方です。

地方人材は働きやすい職場環境を望んでいます。
ワークライフバランスの利点は心の安定です。
欠点は自己研鑽に時間を割きづらいということです。特に技術職であれば、技術指導を通じて向上した技術が顧客への満足度に繋がります。

しかし、業務時間内の技術指導が難しい場合は業務時間外に行う必要があります。
その問題点を新人と共有しなければなりません。


1-4 基本的に人間力が優れている


人間力とは「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」と定義されています。
その人間力を構成する要素が「知的能力的要素」、「社会・対人関係力的要素」、「自己制御的要素」です。
非認知能力が優れている地方人材は「社会・対人関係力的要素」を多く持っています。

つまり、コミュニケーション能力があり、他者を尊重できるということです。

2.地方人材の育成ポイント


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地方人材の育成ポイントを「伸ばすべき」と「注意すべき」に分けて解説します。

2-1 地方人材の伸ばすべき育成ポイント


①他部署との関りを多く持たせる

他部署との関りを増やし、コミュニケーション能力を向上させましょう。
同じ職場であっても、関わる人は一部ということもあります。職場の全員と話すというのを目標にするのも興味深い取り組みです。
そこで、相手にストレスを与えないように試行錯誤する経験がコミュニケーション能力を向上させます。

つまり、相手の表情や仕草、態度を観察して心境を把握する訓練です。
もちろん、地方の中小企業だからこそできる取り組みではあります。可能な限り関わりを持たせてあげましょう。

 

②得意分野と仕事を繋げる誘導をする

協調を好む地方人材は企業に直接貢献できる仕事を与えましょう。
新人であればわかりやすいタスクがおすすめです。ひとりひとりの能力を評価し、得意分野があればそこを伸ばしてあげましょう。
例えば、ファッションセンスがある人材であれば、色遣いが得意です。
そのセンスは広報に活かせます。

また、カメラが好きな人材には企業ホームページの写真を担当できます。
他にも、動画編集が得意であれば企業PR動画を作成して動画サイトに投稿するなど、結果としてわかりやすく共有できます。
企業に貢献できたという経験が自信に変わります。

 

③グループでの取り組みを多く持たせる

一人で取り組むタスクよりも、グループで取り組むタスクを与えましょう。
なぜなら、地方人材が苦手とする「自ら行動すること、発言すること」に対する訓練ができるからです。その過程にある意見交換が、臆病で用心深い特徴を改善させます。

また、形になったものをプレゼンテーションまで落とし込むことも重要です。
一人ではなくグループという環境を利用することが地方人材を伸ばすポイントです。

2-2地方人材の注意すべき育成ポイント


①仕事の効率を教える

地方人材には仕事を効率化すること指導します。なぜなら、他者にペースを合わせてしますからです。
これは協調することのデメリットであり、人が原因である状況は、争いを嫌う地方人材にとって解決しにくい問題です。

また、非効率な状況は企業にとっても損害です。新人の頃は遠回りしやすいので、効率化できるところは適宜指導していきましょう。


②目標を設定し、将来を考えさせる

地元人材は仕事の将来像を考えない傾向にあります。
なぜなら、プライベートの環境を優先し、そこに近い職場を選んでいるからです。
実際に、地方では土地が安いため戸建てを持ちます。
その家が中心になり、移動手段も車が中心になるので職種によって職場は限られます。

つまり、仕事の将来像を優先されることはありません。そこで、地方人材の育成と並行して将来を考えさせる必要があります。

将来の目標を設定することで、短期目標・中期目標・長期目標に細分化できます。
目標を細分化できれば、育成する側も「今やるべきこと」が明確になります。


③自分を客観的に観させる

視野が狭くなってしまうのを防ぐため、自分を客観的に観させましょう。
地方人材の特徴に「頑固・臆病・変化を嫌う」といったデメリットがあります。
このデメリットが新しいものを取り入れる機会を失います。結果、自分の狭い世界で物事を判断するようになっていきます。
つまり、変化の少ない地方にいることで、さらに視野が狭くなってしまいます。

この状況に対して、指導者から直接指摘するのも効果的です。
しかし、自分で気づかせるように誘導することも重要です。
その誘導方法は「最近○○になってない?」と質問するように言葉をかけるだけです。
問われた当人は「自分は周囲からそう思われているのか」と、客観的に観ることができます。

3.地方人材の指導者はどのような視点を持つべきなのか


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この3つの視点を持つことで地方人材の将来像を把握できます。


3-1 職場でキャラクターを確立させる


地方人材は環境を中心に職場を選ぶため、問題がない限りその職場で雇用され続けます。

そこで、将来的に新人がその職場で勤務を続けるには、キャラクターの確立が重要になります。
なぜなら、キャラクターを確立させておくことで、新人に問題が起こったときに周囲の人間が助け船を出してくれるからです。

最初は連絡などの簡単なタスクを課すことから始めて、他部署との関りを持たせます。
また、指導者がその新人の特徴を他部署の同僚に紹介するとさらに効果的です。

そして、キャラクターが確立されれば周囲からの信頼も得られ、仕事を円滑に進めることができます。


3-2 職場の古いルールや考えを押し付けない


地方では、古いルールや考えを残そうとする傾向があります。
現時点で全く意味をなさないものもあります。そこが変化を嫌う地方人材の特徴でもあります。

もし、あなたが職場の古いルールや考えに意味はないと判断したのであれば、それを新人に押し付けないようにしましょう。

勘のいい新人であれば、意味のないルールや考えを押し付ける指導者に嫌悪感を抱きます。
指導者の権威性を保つためにも古い情報には注意が必要です。


3-3 最後までその職場で勤め上げるのが美学ではない


地方には無意味なルールや考えと同様に、「最後まで勤め上げる美学」というものも存在します。これが視野を狭くします。

地方人材でも、将来的に東京や海外に興味が湧くこともあります。

また、その職場で思うようにいかないこともあります。
そこで、転職を考えているなら無理に引き留めず、距離を置くのも重要です。

 

まとめ


地方人材は協調的・保守的で対人関係を優先します。
ひとりひとりの能力を評価するにはグループワークが有効です。

まずは、「みんなで協調しながら」と、地方人材にとって能力を発揮しやすい環境を作りましょう。
そこから徐々に自立へ導いていきましょう。

地方のデメリットは変化を嫌うが故の視野の狭さです。
特に新人は周りが見えていません。

指導者自身が広い視野を持つように心がけ、将来を見据えた目標設定をしてあげましょう。

 

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