次世代型商社への進化 ~ファミリービジネスを引き継いだ2代目社長の挑戦~

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ファミリービジネスオンラインの記念すべき第一回の老舗企業インタビューは西友コーポレーション。
今まで一切メディア露出をしてこなかった神戸の一流老舗企業の真相に迫る。

1990年創業の西友コーポレーションの2代目経営者である南氏。
ジッパーの輸出をメインとする同社は現在、変化し続ける時代における商社として在り方を課題に様々な挑戦を続けています。
就任以来、新しい価値の創造をし続ける南氏に家業を継ぐことになった際の心境やこれからの展望を伺いました。

南 泰準
株式会社西友コーポレーション代表取締役

ロー・スクール卒業後、弁護士として従事。
2019年、株式会社西友コーポレーション代表取締役に就任。
就任後は先代より受け継いだ企業の理念を守りながら、更なる発展と安定のため、多岐に渡る事業を展開し、次世代型の商社としての在り方を考えた経営を行っている。

西友コーポレーションの歴史



西友コーポレーションの設立から現在までの歴史について教えてください。

西友コーポレーションは海外ブランド用ハンドバッグの資材、主にYKKのジッパーを輸出する会社として平成元年に設立しました。

創業者である先代はもともとYKKのジッパーを輸出する会社で勤務していましたが、自分で起業した方がより多くのお客様により良いサービスを提供できると考え、独立を決意するに至ったようです。
バブルがはじけて間もない頃でしたが、当時は外国語を使える人材が少なく、インターネットもなかったため、通関業のニーズも高く、それらのニーズをうまく捉えることが会社の成長に繋がったようです。

設立してから約30年間、震災やリーマンショックなどの紆余曲折はありながらも会社は成長を続け、平成から令和に変わると共に先代が代表を勇退し、私が会社を引き継ぐことになりました。

現在は、近年のグローバル化やIT化、昨今の米中の貿易戦争やコロナ問題等の影響により経営の多角化を考える必要が生じており、ただ単に右から左に買って売るだけの商社ではなく、そこに付加価値を付けられるような企業にしていきたいという想いで経営をしています。

家業を継いだきっかけ

—企業を継ぐことを決意したきっかけを教えてください。

高校時代からアルバイトに来ていたのでどういった会社なのかは把握をしており、いずれは会社を継ごうという気持ちはありました。
せっかく父が始めてここまで大きくしてきた事業なので、誰が継ぐんだという話になった時に、息子だからこそ自分の人生を賭けていくことができると考えたからです。
もっとも、会社を継ぐ前に自分なりの力を前もって身につけておきたいと思い、法律を理解していれば会社経営の武器にもなると考えたことから3年半ほど弁護士の仕事をしていました。

将来を視野に入れていたので、実際に引き継ぐことになった際もさほど迷いはありませんでした。

ただ弁護士の資格があるからといって、それが実務能力とイコールになるというわけではないので、最初は夜遅くまで残って仕事をしたり、認めてもらうための努力を続けていました。

会社の人間とは昔からの顔馴染みであることと、仕事に対してひたむきに取り組んでいたこともあり、 周囲からの私に対する拒否反応のようなものを感じることもありませんでした。

イノベーションを起こすための新しい取り組み

—就任後に新しく取り組んだことや挑戦していることについて教えてください。

現在のメインの事業はジッパーの輸出ですが、私の代になり、様々な事業にチャレンジしている段階です。
老舗企業だからといって、いつまでも永続的に今の事業が続くとは限らないので、いかに私の代で次のチャンスに布石を打てるかが重要と考えています。

特に近年は、
SNSなどを媒体として世界中をつなぐデジタルコミュニケーションや、AIプログラムによる様々なオートメーションなど平成初期で考えられなかったコンテンツが市場で盛り上がっています。

時代にニーズがあるものをいち早く取り入れ、自分たちの事業として展開できるようなフットワークが必要となります。

そのための1つ目の取り組みとして、デジタルマーケティングコンテンツの制作を行っています。
SNSを媒体としたコンテンツを自分たちの会社で制作し、仕入れ元の商品をブランディングして、販売戦略のサポートをしていきたいと考えています。

2つ目の取り組みとして、物流会社を内製化し、阪神間の配送からアジア方面への輸出に至るまでの円滑な物流の実現を目指しています。
物流経路のデータ化や保管倉庫のオートメーション化にもチャレンジしています。

上述した通り、先代の頃とは違い、現在はグローバル化、IT化が進むことにより商社に対するニーズが変わってきており、 商社の存在する意味が希薄になってきているという危機感から一刻も早く付加価値を付けられるようにしなければならないということを常に念頭に置いています。

商社としての事業以外では、社会貢献の一環として、発達に偏りのある子どもたちに集中的な療育を施す児童発達支援事業所を4教室展開しています。
現在は「発達障害」といういかにもハンディキャップのあるような呼称になっていますが、その実、ある分野では優れた能力を示す児童も多く、そうした児童たちの才能をいかんなく発揮できるよう療育を施すことが、児童にとっても社会にとっても必要であると考えています。

守り続けたい想い

—老舗企業としてこれからも守り続けたいものはありますか

先代の頃より「必要とされる企業でありなさい」という理念がありました。
社会の役に立つ、人のためになる、そのように常に利他的に考えて行動していく。
この理念はこれからも守っていきたいと考えています。
ただ、何が必要とされるのかは時代によって移り変わるものなので、我々の理念を変えないためにも常に我々自身が変わり続けていく必要があると思います。

西友コーポレーションの未来

—今後、西友コーポレーションを繁栄させるための想いを教えてください。

「商社はこれからの時代に必要なのだろうか?」という問題意識が私の根本にあり、モノを買って売るだけの商社は、プラットフォームのある大手企業は別として、必要とされなくなるのではないかと危惧しています。
中小企業の商社である
我々にしかできない売り方、サービス展開ができる会社に生まれ変わらなければ通用しない時代になりつつあると感じています。


中小企業だからこそ始められる部分として、大手企業の知らない小さいメーカーにも品質が高くこだわり抜いた商品が存在することから、そういった商品の良さをデジタルとリアルの両面から余すことなく世界に伝えて価値を共有していくことで、商社の本質に立ち戻ることができるのではないかと考えています。
”次世代型の商社”のあり方を模索しながら挑戦し、時代に合わせた方法を実現していきたいと思います。

これから家業を継ぐ方々へ

—これから家業を継ぐ方へのアドバイスをお願いします。

先代と比べられるというのは家業を継ぐ人間にとって避けられない道だと思います。
先代は自分で創業し、自分で会社を大きくしてきたので、最も会社のことをわかっています。
2代目は、会社がある程度成長した前提から始まるので、個人としての事業への理解や実務能力に至らない点があったり、プレッシャーを感じたりすると思います。
私自身はそんなプレッシャーを乗り越えるために実践していることが2つあります。


1つ目は自らを律すること。
2代目は、既に会社に資産や人材、仕事が存在することから、そこに甘えてしまいたいという誘惑を感じることもあるかと思います。
裏を返せば、既に存在する会社のアセットに甘んじることなく経営をしていくことは想像以上にハードルが高いです。

私が自分自身に言い聞かせているのは、現状の環境に甘えるよりも、人一倍、自分を律し、行動していくということです。

2つ目は自分だけで抱え込まないこと。

経営を行っていくと、どこかで孤独を感じる時があるかと思います。 そんな時こそ「自分の向かう方向は正しいのか」、「今、改善すべき部分はどこなのか」 そういった相談ができるパートナーの存在が必要だと思います。
最終的には自分で決定し、自分で責任を取らなければならないからこそ、自分の判断を客観的に見つめ直す契機が必要だと思います。

この2つを常に私自身も念頭に置いて経営をしていますので、 これから家業を継がれる方のご参考になればと思います。

最後に、バブルの崩壊やリーマンショック、大震災をはじめとした災害など、いろいろなことが社会に打撃を与えてきましたが、それを乗り越えて来られたのは従業員の支えがあってのことだと深く感じています。
変化を繰り返す時代において社員が一丸となり、様々な挑戦を続け、長く地に足の着いた必要とされる企業であり続けたいです。

 

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