大塚家具、久美子社長の退任から学ぶファミリービジネス

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骨肉の争いとも報じられ実親と娘の間の経営権争いがされた大塚家具。

娘の久美子社長が主導となり経営権を握った後にも、なかなか業績は回復せずに最終的には家電量販店の大手山田ホールディングスからの出資を受け入れて現在経営再建中でした。

コロナウイルス感染拡大の煽りも受けて、大塚家具は未だに赤字形上の状態が続いていましたが、来年にはある程度の経営改善と黒字化の見通しが立ちつつあるということが報じられ、一連の騒動が落ち着いた印象を受けます。

そんな中で大塚家具の会社内では、久美子社長が今までの業績悪化における責任の所在を明確化するために、退任を申し出たというニュースが飛び込みました。

久美子社長は2009年から、父親で大塚家具の創業者でもある大塚勝久氏の後継者として社長に就任し、経営方針を巡る対立を繰り広げながら今日まで社長の座についていました。

しかし山田ホールディングスの傘下に入り、僅か一年足らずで業績が上向き黒字の見通しがたったので自身の能力の不足を実感し退任をする決断をしたのでしょう。

もっともなぜ大塚家具は、世襲のファミリービジネスという引継ぎやすいビジネス形態で事業を行っていたのにも関わらず失敗してしまったのでしょうか。

そこで今回は大塚家具の久美子社長の退任から学ぶファミリービジネスと題して、大塚家具の歴史を分析しながら、ファミリービジネスの難しさや成功させるためのポイントを解説していきたいと思います。

 

1代で大きな成功を収めた創業者の大塚勝久氏

 

大塚家具は僅か1代で日本を代表とする家具メーカーにまで登りつめた会社です。

大塚勝久氏は、箪笥店から経営を初めて独立し大塚家具を創業しました。

当時では珍しいビジネススタイルであった「会員制の家具店」という独自の販売形態をいち早く導入することで、家具という高い買い物をする消費者のニーズをしっかりと掴む事により成功を収めた会社です。

家具というのは「引っ越し・結婚・出産」という人生の節目の時にしか買い換える機会がないものですが、会員制で消費者の求めるものにしっかりと答えることで高いリピート率を誇ることによって売上を順調に伸ばしていきました。

その後日本でも知らない人が少ない高級家具店として成長したのですが、外国製の家具や格安家具などが流行するにつれて苦戦するようになり、業績は少しづつ悪化。

特にイケア・ニトリといった新規チェーン店が順調に業績を伸ばす中で、会員制の高級家具というのは日本の消費者の需要にそぐわないものとなりつつあったために、大塚家具も経営形態を見直すことを迫られることになりました。

そして2009年に当時社長であった大塚勝久氏が会長に退き、後継者として久美子氏が社長に就任したのです。

 

優秀な初代経営者と2代目の対立

 

ファミリービジネスにおいて、優秀な創業者であった初代から2代目・3代目が引き継ぐことで、衰退をたどってしまうということはよくあることでしょう。

久美子氏は就任直後から経営状態を立て直すために、初代のやっていた経営手法を一新し経営改革を行うことで、一時はある程度の業績を回復させました。

しかし自身が作り上げてきた大塚家具を壊されていくように感じた初代の勝久氏は、久美子氏を社長から退陣させて再び社長の座に就任。

久美子氏は会員制でお高いイメージのある家具屋という、消費者の固定観念を覆すためにカジュアルな路線に舵を切っていましたが、勝久氏はこれを全て元の高級路線に戻しました。

そして高級志向のもと高額な商品やそれを売り込むための莫大なマーケティング費用を注ぎ込みましたが、業績は悪化し大失敗。

その結果、久美子氏と勝久氏の株主創価による追い出し合戦が行われて、久美子氏が再び社長の座に返り咲いたのです。

 

2代目の創業者の軽視が大失敗を招いた?

 

久美子社長は、一橋大学を卒業し誰もが知っているような大手銀行に入社。

その後大塚家具で組織管理体制をはじめとする、経営に関しての勉強をして自身でコンサルティング会社を立ち上げました。

これだけの経歴を見ると、まさにエリートであり会社の経営・管理などをしっかりと勉強しているように感じられます。

しかし結果的には、大塚家具の立て直しに失敗してしまい他会社が立て直しに成功してしまうという屈辱的な結果で終わってしまいました。

なぜこのようなことが起きたのでしょうか。

そこには2代目特有の創業者の軽視が根底にあり、大失敗を招いてしまった可能性があります。

確かに勝久氏は血の繋がった肉親であり、父の作り上げた会社によって久美子氏は育ってきました。

もっとも会社経営には、血のつながりや情は切り捨てるべきものであり、この点についてはすっぱり父親を切った久美子氏は正解といえるでしょう。

しかしあくまでも創業者であり軽視して追い出してしまうのは、やりすぎだったのではないでしょうか。

なぜなら創業者の勝久氏は、簡単に大塚家具という大きな会社を作り上げたというわけではないので、そこまでの道のりにおいて経営危機などもあったはずです。

そういった経験がある人をすっぱりと切ってしまい、経験からくる意見を取り入れることができない状態で久美子氏が社長に就任してしまえば、その後トラブルなどが生じた際の対応が遅くなってしまうでしょう。

初代の経験を引き継ぐこともせずに、単純に意見が違うからといって全てを捨ててしまうのは、大きなデメリットです。

このような強烈な成功体験を有している初代を家から追放して、優秀そうに見える2代目が目新しいビジネス手法を行うことはファミリービジネスで多く見られるケースですが、大抵失敗に終わってしまいます。

なぜなら大塚家具の場合でも、久美子氏はあくまでも経歴は立派で有り優秀な人間であることは確かですが、一方で現場の風を感じて実際の業務に触れる機会はほとんどありませんでした。

現場の状況を理解し切ることができないままの状態で経営権を握ってしまい、机上では達成可能だが現実味のないビジネススタイルなどを取り入れてしまい業績を悪化させてしまったのです。

 

できたであろう大塚家具の理想的な経営とは?ファミリービジネスの重要なポイント

 

大塚家具を自身の手で復活させることができないまま、久美子氏は退任する事になってしまいました。

どういった経営を行っていれば、大塚家具は久美子氏体制の下で立て直すことができたのでしょうか。

結論から述べると、ファミリービジネスの強みともいえる「父娘の協力」があれば経営を立て直すことができ理想的な経営をすることができたといえるでしょう。

父である勝久氏は、箪笥店から独立して1代で日本の家具店の中でも有数の大塚家具を作り上げました。

いわゆる現場を知り尽くした人物であり、ニトリ・イケアといった新規家具チェーン店の波が襲いかかってきても、その経験というのは全く役に立たないものではありません。

1企業を作り上げるに至った「経験」というのは何にも変え難いものであり、それこそが大塚家具の有していた武器でもありました。

一方で娘の久美子氏は、一橋大学出身で大手銀行に就職後に大塚家具で管理体制の勉強をするといった絵に描いたようなエリート2代目経営者です。
難関大学や就職の難しい大手銀行に入ることができたところを見るに、優秀であることは間違いないでしょう。

加えて自身でコンサルティング会社を立ち上げていたということもあり、エリートの名に相応しい2代目経営者になります。

そのため父である勝久氏が考えつかないような、経営手法やビジネスなどを考える能力はあったはずです。

1代で日本屈指の家具企業を作り上げた勝久氏の「経験」と、高い能力や知識を蓄えた2代目の「知識」を合わせることで大塚家具は経営を再建することができたのではないでしょうか。

久美子氏も一時は経営を立て直すところまでいっていたので、父親の経験とすり合わせて無理のない経営改革を行っていけば今のような他社の傘下に入って立て直しを図るといったことが起きることはなかったはずです。

勝久氏は山田ホールディングスに身売りを行うといった報道がでた際に、「自分が作り上げた会社がそのような状況になっていると聞きショックである。もし社長である久美子氏が連絡してくれれば相談に乗る」と語っていました。

父娘でうまく協力をしながら、足りないところを補っていくことがあるべきファミリービジネスの形なのではないでしょうか。

父の経験を子供にしっかりと伝え、ある時には問題を父自ら解決することによって、子に経験を相伝していく。

こうすることでファミリービジネスをうまく回していけるでしょう。

 

ファミリービジネスにおける最大の問題 世襲をどう上手く乗り切るか

 

大塚家具が父娘の協力が理想的な経営の形であったように、ファミリービジネスには様々な形態があります。

その中で共通しているのが「世襲」問題です。

大塚家具でも世襲を上手く乗り切ることができれば、経営陣がコロコロ変わることによる混乱によって経営基盤が揺らぐようなことはなかったでしょう。

そこで世襲をどのように乗り切ればいいのか、以下で解説していきます。

 

初代・2代目には異なる能力が必要

 

押し並べて創業者というのは、自身の能力をフルに活かして0か1を生み出すことで、会社を創業し拡大していきます。

初代創業者がバリバリと働けている間は、その会社も安泰といえるでしょう。

問題なのは初代が引退に近づき、2代目へと経営を譲るタイミングが来た時です。

そもそも初代の創業者とは異なり、2代目に要求される能力は時流に沿ったビジネスを行い事業の拡大や維持を行っていくことになります。

そのため必ずしも経営能力に優れている必要はなく、会社の人々で回していくことができれば十分なのです。

また2代目が初代創業者と比較して、経営者として優秀だとは限らないでしょう。

経営者の交代が行われる際には、それぞれの特徴が異なることをあらかじめ把握して、2代目が上手く経営をできるサポート体制を整えておくことが重要になります。

 

経営者でもコミュニケーションは重要

 

経営者になると、相談相手がいなくなってしまい重要な決断は自身で決めなければいけません。

しかしこの場合でも、先代の経営者が常にコミュニケーションをとって相談することができる環境を作っておけば問題ないでしょう。

経験という現経営者にはないものを先代の経営者は有しているので、難しい決断や会社として大きな岐路に立たされた時は、コミュニケーションを取って負担を取り除いて上げることができるのがファミリービジネスの強みです。

大塚家具でも、父薄目が十分にコミュニケーションをとって経営に当たれば、こういった結末になってしまうことを防げたのではないでしょうか。

世襲を行う際には、必ずコミュニケーションをとって2代目の負担を減らしてあげましょう。

 

まとめ 大塚家具、久美子社長の退任から学ぶファミリービジネス

 

今回は大塚家具の久美子社長退任から学ぶファミリービジネスと題して、どのようにすればファミリービジネスは上手くいくのかを解説してきました。

初代創業者と2代目は求められる資質が大きく変わってきます。それをあらかじめ考慮して、経営権が変わった後でも、2代目以降の人をサポートできる環境作りをすることが重要です。

ファミリービジネスは、結びつきが強い分1度拗れてしまうと元に戻れなくなってしまう可能性があります。

大塚家具も、父娘の協力があればある程度経営状態の改善を測れたはずです。

しかし1番経営状態が不安定な時に、お家騒動が起こってしまったためこのような結末になってしまいました。

ファミリービジネスの強みを活かして、コミュニケーションをしっかり取りつつ問題を解決することができれば、大きな問題が起きても大丈夫でしょう。

大塚家具の失敗からしっかりと学んで、ファミリービジネスを絶対に失敗させないように取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

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