北京ダック老舗企業「全聚徳」の経営不振から学ぶ日本の老舗企業のあり方

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銀座・新宿・六本木と日本の高級飲食店が揃っている各地にも出店している、北京ダックで有名な中国老舗チェーン店「全聚徳(ぜんしゅとく)」が、新型コロナウイルスによって深刻な経営不振に陥っています。

10月26日に発表した2020年7~9月期の決算報告によると、同年1月~9月までの累積売上高は前年度比の56.71%減少の5億1500万元(約80億5000万円)であり、純損失にあたっては前年同期の約5.8倍と目も当てられない業績になってしまいました。

決算報告に伴い、同社は新型コロナウイルス感染拡大によって主となるレストラン経営が上手くいかずにこのような深刻な打撃を受けてしまったという説明をしております。

「万里の長城を登らなければ男ではなく、中国に訪れたのであれば北京ダックを食べないのは残念なことである」

中国でも古くからこのように言い伝えられているほど人気を博している北京ダックの中でも、全聚徳は老舗中の老舗企業です。

なぜこういった老舗企業が新型コロナウイルス感染拡大という要因はあっても、深刻な経営不振を招いてしまったのでしょうか。

今回は中国という世界でも1,2を争うほどの大国でも、有数の老舗飲食企業が経営不振に陥ってしまった理由や立て直しの要因について探っていきたいと思います。

 

新型コロナウイルス感染拡大前から陥っていた経営不振

 

引用:Wikipedia

全聚徳は中国の中でも指折りの北京ダックで有名な老舗飲食企業です。

北京ダックだけではなく傘下に「全聚徳」「倣膳」「豊沢園」「四川飯店」といった飲食ブランドを持ち、計117店を展開しており、そのうち全聚徳が109店と大部分を占めています。

1864年に創業してから156年の歴史を有しており、2007年に株式公開を行い上場を果たしました。

「老舗レストラン・飲食の上場第1号」「北京ダックで上場を果たした」

このように中国国内ではもてはやされて人気を博しており、業績が波に乗っていた2012年には、19億4400万元(約304億円)の売上高と1億5200万元(約24億円)の純利益を計上するほどでした。

もっとも全聚徳の新型コロナウイルス感染拡大前における3年間の決算を見直してみると、業績悪化は既に始まっていたことが分かります。

  • 2017年…売上高 18億6100万元(約291億円)
     純利益 1億3600万元(約21億円)
  • 2018年…売上高 17億7700万元(約278億円)
    純利益 7300万元(約11億4100万円)
  • 2019年…売上高 15億6600万元(約245億円)
     純利益 4500万元(約7億330万円)


このように毎年のように純利益が10億円近くも右肩下がりで落ちていることが分かります。

なぜ中国国内で100店舗以上を経営している老舗飲食企業が、このような右肩下がりの経営不振に陥ってしまったのでしょうか。

実はそこには老舗企業ならではの原因がありました。

 

老舗企業特有の経営課題が散見


新型コロナウイルス感染拡大前から、少しづつ経営不振に陥っていた全聚徳には、日本の老舗企業にも散見される様々な経営課題を抱えていました。

日本の老舗企業の経営にも参考になる経営課題を実際に以下で見ていきましょう。

 

中国老舗企業の5割が赤字


全聚徳の詳細な経営課題を見ていく前に、中国老舗企業全体の経営状態を見ていきましょう。

中国では老舗企業に対して「中華老字号」という称号を1128社に与えています。

一目見ただけで老舗企業だと分かるこの称号を有している企業は、経営も上手くいっているのではないかと思われますが決してそうではありません。

実は老舗企業に該当するこの1128社の5割が経営赤字に陥っている状況なのです。

どの老舗企業も共通して、老舗企業というブランドだけを武器にして問題のある業務改革に着手せずここまで来てしまったことが原因になります。

業績が好調で健全な経営を行なっている企業は、およそ1割に満たない数しかない状況で、どの企業もIT技術の取り入れに失敗して変化に取り残されてしまっているのが現状です。

全聚徳も過去3年間は赤字ではなかったものの、こういった老舗企業特有の問題を抱えたまま新型コロナウイルス感染拡大前まで経営を続けておりました。

以下で実際に全聚徳特有の経営課題について詳しく見ていきましょう。

 

ブランド価値の低下


北京ダックで上場まで果たした全聚徳ですが、企業として徐々にそのブランド価値が低下していってしまいました。

創業・上場当事は珍しかった北京ダックに伴う高級料理店も、年を追うごとにありふれたものとして大衆に根付いていってしまった結果、相対的にブランド価値が下がっていってしまったのです。

また老舗企業特有の新しいイノベーションを生み出すこともないままに、だらだらと経営を続けていってしまったのも原因になります。

飲食店としてイノベーションを生み出すことは難しいかもしれませんが、老舗企業であるという1点だけで企業努力をしてこなかったというのもブランド価値を徐々に下げていってしまった原因といえるでしょう。

 

消費者の選択肢の増加と商品アップグレードの欠如


2007年に株式公開を行なって上場してから、13年が経過をして飲食業界を取り巻く環境も大きく変貌をとげました。

上場した当時には、高級料理として様々な人に愛されていた北京ダックも、現在では様々な形で消費者に楽しまれています。

毎年のように様々な国の人気料理が市場へと現れることで、消費者の食事の選択肢は様々なものから選べるようになりました。

そんな中であえて「北京ダック」を選んでもらうためには、他の料理を出す企業や競合他社との争いに打ち勝たなければいけません。

しかし全聚徳では老舗企業としてのブランド力は低下しながらも維持していましたが、商品を現代の市場における競争に打ち勝てるようなアップデートは行なっておりませんでした。

つまり「老舗企業である」という強みだけを武器に、競合他社や他の企業と戦っていたことになります。

これでは徐々に市場で勝てなくなってしまっても無理はありません。

現に新型コロナウイルスが感染拡大する前でも、観光シーズンに突入した時期に、全聚徳が北京市に有している店舗では閑古鳥が鳴いていました。

一方で同じ時期の時間帯において競合他社の北京ダックを提供するお店では、満席状態もしくは行列ができるほどの繁盛ぶりをみせており、必ずしも北京ダックの魅力が完全に薄れてしまったというわけではないことが分かります。

全聚徳は企業として、老舗企業であることに胡坐をかいたまま競合他社に勝てるような企業努力を怠ってしまっていたことも経営不振に陥った原因の1つであること間違いありません。

 

インターネット技術取り入れの遅れ


全聚徳が徐々に経営不振に陥ってしまった原因の1つとして、インターネットに関する技術の取入れが遅れてしまったという点があげられます。

日本でも老舗企業を中心とする中小企業のIT化の必要性が叫ばれていますが、中国の老舗企業もまたIT化が遅れてしまっていた企業の1つです。

老舗企業としてブランド力を保持していたものの、急激に変化することを恐れたことによりIT化が遅れてしまう結果になりました。

そのため新型コロナウイルス感染拡大に伴い、ようやくオフラインとオンラインのサービスを連動させることに着手することなどを始めることを発表。

遅すぎたインターネット技術への対応は、老舗企業が抱える普遍的な問題の1つです。

日本の企業も中国老舗企業の失敗から学ぶことができる点は、いくつもあるのではないでしょうか。

 

新型コロナウイルス感染拡大による致命的な打撃


こういった上記の経営課題を抱えながらも、老舗企業というブランド力を頼りに経営を続けてきた全聚徳ですが、新型コロナウイルス感染拡大によって致命的な打撃を受けてしまいました。

感染により店舗経営が立ち行かず、冒頭でも紹介したように売上は例年の約6割に落ち込むなどの大不振。

全聚徳は老舗企業として重い腰をようやく上げて、経営改革に臨むことを発表しました。

  • 料理の値段が高く
  • サービスが悪く
  • コスパが低い

老舗企業の悪いところを全て兼ね備えたような、上記のイメージが現在の全聚徳の評判です。

全聚徳は消費者から上記のイメージを持たれており、これを払拭するにはかなり骨が折れることが予測されます。

 

全聚徳が経営不振を脱出するために取れる対策とは



消費者から悪い印象を持たれ、IT技術の取り入れといった面でも遅れを取っている全聚徳。

新型コロナウイルス感染拡大が止まらない中で、どういった対策を取る事ができるのでしょうか。

日本の老舗企業の問題にも応用できる可能性のある、全聚徳の業務改革案について以下で詳しく考察していきます。

 

料理の値段を下げる


全聚徳は実際に料理の値段を下げるという改革を行なうことを発表しています。

確かに全聚徳は老舗企業にありがちな、根拠の無い高めの値段設定をしていました。

コロナによる影響を受けて看板メニューの北京ダックは、レストラン会員向けの値段をこれまでの258元(約4032円)から238元(約3720円)に改め、そのほかの料理も10~15%値下げることを決定。

10~15%も料理の値段を一気に下げることができるということは、今までどれだけ消費者のことを無視して根拠の無い値段設定をしていたのでしょうか。

1度割高なイメージがついてしまった企業イメージを変えることは難しいですが、この値段設定によってある程度消費者に寄り添ったイメージを持たせることができるのではないでしょうか。

 

サービスの改善


老舗企業ということに胡坐をかいて、サービスが悪いというのは多くの老舗企業に共通する課題です。

全聚徳もサービスの改善に乗り出し、今まで一部の店舗で徴収していたサービス料を廃止することを決定しました。

しかしサービス料を廃止したからといって、サービスが悪いと思われていた状態のままでは未来派ありません。

もっとも消費者というのは、お金を取られたサービスというのには厳しくなりますが、ただのサービスには甘く嬉しくなるものです。

そのため老舗企業として培ってきたサービスを、無料でしっかりと提供することによって、今後の消費者のイメージを大きく変えることができる可能性があるでしょう。

 

IT技術を活用したマーケティング


近年では経営を上手く行うためには、マーケティングというのは必要不可欠になっています。

そのため全聚徳でも、遅れたIT技術の導入を積極的に行いマーケティングの質を高めていく必要があるでしょう。

飲食店として、SNSを活用した手法やキャンペーンの導入など、様々に取りうる手段があります。

老舗企業としてのブランド力を活用しながら、上手いマーケティングを行うことができれば、傾いた経営を立て直すことも十分可能でしょう。

北京ダック老舗企業「全聚徳」の経営不振から学ぶ日本の老舗企業のあり方


中国老舗企業「全聚徳」の経営不振の原因を紐解いてみると、実は日本の老舗企業と多くの問題が共通していることが分かりました。

  • あるのはブランド力だけで競争力がない
  • 消費者の選択肢が増えたにもかかわらず老舗企業として時代に合せたアップデートをしない
  • IT技術の取り入れ失敗


老舗企業といえども、そのブランド力に胡坐をかいていては徐々に経営は悪化していってしまいます。

特に現代では消費者の情報発信のスピードは驚くべきものがあり、ほんの些細な点が問題となり企業として大きなダメージを負ってしまう可能性も否めません。

特にブランド力だけで保っている老舗企業は、今後時代に合わせた経営改革を行なわなければ時代の波に淘汰されてしまうでしょう。

コロナウイルス感染拡大という大きなピンチの中で、自社の状況を1度見直してみてはいかがでしょうか。

 

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