どれだけ成功している企業でも新しい風を入れなければ、時代に取り残されてしまいます。
インターネットが発達し、ビジネスモデルは良いものはすぐに取り入れられる世界の中で近年では企業のブランディングというのがますます重要になっています。
日本の老舗企業でもブランディングを上手く取り入れることで、ブランドイメージをさらに高めることに成功した企業がいくつもあります。
もっともブランディングというのは上手くいくことばかりではありません。
ブランディングに失敗し、企業イメージを下げてしまった例もあり、ブランディングは熟慮を重ねて慎重に行う必要があるでしょう。
そこで今回は様々な老舗企業のブランディング戦略について、成功例と失敗例を挙げながらブランドイメージを高めるには何が必要なのかについてみていきたいと思います。
老舗企業ともなると、ある特定の商品ではこの企業だと思いつくくらいの人気商品があるものです。
しかし近年では人気商品が時代の流れには合っておらず、売り上げが下がっていき、なんとか人気を取り戻そうと値下げや様々なキャンペーンをするも失敗する…こういった負のスパイラルに陥ることがしばしばあります。
老舗企業には今まで守ってきたブランドイメージ、伝統ともいえるべきものがあるはずです。
「大量生産大量消費」の新興会社と競って値下げ競争を行ってしまった場合、ブランドイメージも崩壊しかねません。
時代に合わせるということは無闇にモダンなロゴやパッケージにするということを意味している訳ではありません。
現代の人々のライフスタイルにに合わせて、ブランドも変化をしていくということが重要なのです。
老舗としての確立してきたブランドを前提として、老舗ならではの強みや弱み、競合他社と差別化できる点を模索しながら、その時代における老舗ブランドの新しい戦略を練り上げていくことこそがブランディングになります。
そこで実際に老舗企業がブランディングを成功のでさせた例、逆に失敗してしまった例をみていきましょう。
ここからは実際に老舗企業がブランディング戦略によって成功した例をみていきましょう。
京都にある「薫玉堂」が創業420年を迎えた、日本最古の香りの老舗です。
創業当初から長きにわたって、お寺などに仏前線香を販売している会社になります。江戸時代からは一般の人々に対しても、線香の販売を行っており日本の仏壇の前にお供えするお線香を届けてきた老舗企業です。
もっとも、現在では仏壇というものがそもそも人々に馴染みの薄いものとなりつつあります。
日本人の生活様式から徐々に線香というものは消えつつある中で、薫玉堂も販売実績が落ちていきました。
そこで京都発日本中に線香という香りを届けてきたという原点に着目、京都を連想するような香りの持つせっけんやキャンドルなどの発売を開始しました。
老舗としての伝統とと格式を守りつつ、時代に合わせて変化を受容することでブランディングの成功例と言ってもいいのではないでしょうか。
日本人なら誰もが知っている和菓子専門店の老舗「虎屋」もブランディングに成功した企業の一つです。
室町時代に創業され現在に至るまで約480年以上の歴史を持つ老舗「虎屋」
今の時代、専門店にいけなくても手軽に洋菓子やアイス、和菓子などを楽しめる時代となっています。
そんな中で今までのままでは時代の波に飲み込まれると考えた虎屋は常に変化をしながら今日まで至っているのです。
虎屋の社長である黒川さんは「大切なのは今であり、今おいしいと言ってもらうこと」と語っています。
そのためには昔の和菓子の味に変化を加えて現代の人々に合うようにすることも厭わないという姿勢を老舗企業である虎屋はとっているのです。
現在では若い女性に向けたカフェを表参道や六本木ヒルズに開くばかりか、パリや中東にまで虎屋は広がっています。
こういった取り組みも「おいしい和菓子を届ける」という室町から受け継がれた企業理念と真摯に向き合い、安易な価格競争などブランドイメージを損なうようなことをしてこなかったことによって成功しているといえるでしょう。
どこよりも長い歴史を持つ老舗企業であるにも関わらず、時代にあわせた変化を受容すること。
この姿勢はブランディングを検討している老舗企業にとって学ぶことが多いものではないでしょうか。
ここまでは老舗企業のブランディング成功例について詳しくみてきました。
もっとも全ての企業がブランディングに成功するという訳ではありません。
むしろ失敗から多くを学べることもあるので、ここからは失敗例を紹介していきます。
ドクターペッパーは世界中で愛されている炭酸飲料です。
アメリカを中心に販売されてから、日本でもよく見かける飲料でしょう。
そんなドクターペッパーが低カロリーである「ドクターペッパー10」の発売時に、消費者のターゲットを男性に絞りました。
パッケージなども刷新し「女性はお断りです」というイメージを押し出したところ、女性を蔑視しているのではないかと強烈な批判を浴びてしまうことに…
現代では男女平等が基本であり、企業が女性を差別するような表現をすることは許されません。
ドクターペッパーは時代に適合しないブランディングを行ってしまったことで失敗した典型的な例といえるでしょう。
日本でも有名なハンバーガーチェーン店である「バーガーキング」も実はブランディングに失敗した企業の一つです。
過去にバーガーキングは、話題作りの一環としてブランド名を「フライズキング」という名前に変更しました。
従来のバーガーのイメージ画像もフライドポテトに変更。
「元バーガーキング」という名前をロゴに入れて企業のイメージを一新しようと試みたところ、これが大失敗に終わります。
元バーガーキングが企業のジョークなのか本気なのか、消費者が理解できず話題作りにも失敗してしまいました。
ただ単純にパッケージやロゴを変えるだけで企業のイメージを変えることができる訳ではなく、むしろ混乱を巻き起こす可能性もあるということです。
バーガーキングという世界的な企業でもブランディングは安易に行うと失敗してしまうということであり、ブランディングの際は必ず覚えておきたい失敗例といえるでしょう。
テレビなどで有名なメーカーであるソニーもブランディングに失敗しています。
「人の心に訴えるモノづくり、感動価値創造に向けて」というコンセプト、高級ブランドクオリアを展開しました。
もっとも高級ブランドということだけが先行し、感動を与えるというコンセプトを達成することができずに失敗に終わってしまったのです。
なぜならクオリアは外見は現代風のスタイリッシュな造形でしたが、肝心の機能が感動を与えるような革新的ものではありませんでした。
その結果消費者の望むものとズレが生じてしまったことが失敗の最大の原因といえるでしょう。
老舗企業のブランディング戦略について成功と失敗を紹介してきました。
伝統と格式を有している老舗企業といえども、企業コンセプトとずれたブランディングやそもそも時代と完全に逆行している戦略では失敗は必然的になってしまいます。
時代に合わせたブランディング戦略、それが老舗企業がブランディングを行うにあたって最重要の課題といえるのではないでしょうか。